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エンディングノートのheronのレビュー・感想・評価

エンディングノート(2011年製作の映画)
3.8
自分はまだ若いといっても周りの年老いた人は更に年老い、健康だった人もいつのまにか病気になっていたりする。時間が経つのは当然なのに、昨日までいた誰かが今日居ないことにさびしいと感じるのが人間だと思う。会ったことのないテレビの中の有名人が亡くなったニュースを目にしたってさびしくなる。一緒に過ごした人には余計に。

若い自分自身の「死」は未だはるか遠くに感じるが、人の「死」そのものを考えたり関わることも少しずつ増えてきた。先月、自分の祖父が亡くなった。そのタイミングで本作を観れたことは自分にとって心情を整理する、死について考える大事な材料となった。自らの死期を悟りながら生きることなど僕には到底想像がつかない。死ぬという言葉そのものはあっけないけれど、死ぬ前にも、本人が死んだ後にも身近な人々が作る小さな輪の中に濃密なストーリーがあるのだ。後の無い純粋な気持ちがある。死というのは生命反応が亡くなったその瞬間だけのことでもなく、死を迎えた本人だけがすべてを請け負い旅立つことではないと思った。当の本人、周りの大切な人たち、やり切れなさも感謝も喜びも悲しみもその涙も、嘘偽りなく描かれている様子に胸を打たれた。生きる姿・生きた姿に。

ただ、シーンの切り替わり方・BGM・ナレーションが自分にはあまりフィットしなかったことであまり内容に入っていけないところがあった。しかしこれは僕のひねくれた部分かなと思う。

そのことと作品の普遍的なテーマを含めた意味で年を重ねてから再び観賞したいと思う。
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