このレビューはネタバレを含みます
いろんな観方ができる作品。大方、「たった一つの過ちがその後の人生を大きく狂わせる」ことを描写した作品と括られることが多いようであるが、個人的にはこの作品の魅力はそこだけに止まらない。
「定食に就いていて普通の収入を得ているはずなのに何故か貧困な人」
「自己肯定感が低く、自分で自分を落とすような方向に行動してしまう人」
「貧困状態なのに家族には見栄を切りたいので自分が貧困状態であるのを言い出せない人(ええかっこしい、をしてしまう人)」
これらの描写において本作は本当に秀逸で、他を寄せ付けないクオリティではないかと思う。おそらく「たった一つの過ちが…」というそう単純な話ではないのだ。きっかけは一つの事件だったとしても、その影響に尾鰭がつき別の何かがつき…となって延々と悪い方向にごろごろと転がっていく。そして、経済苦が人間の精神を徐々に蝕んでいく様子の描写も群を抜いて良い。ああ、こうして人はおかしくなっていくのだ、ということを思い知らされる。
あまり有名な作品ではないようだが、個人的に傑作の一つ。