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静かなる叫びのtoyocaのレビュー・感想・評価

静かなる叫び(2009年製作の映画)
3.8
やっぱり、ドゥニヴィルヌーヴはすごい。重くて苦しい主題を、わざとらしい軽さを一切入れることなく、正面からひたすら重く、やってきた。先日観た『女神の見えざる手』はアメリカの銃規制法案を通すためのロビー活動の話、そして、また起こったテキサスの銃乱射事件。観るタイミングは、間違いなく今だった。

この監督の銃の表現が、いつも腑に落ちる。『灼熱の魂』でも感じたけれど、銃を持ち撃つ人間は、ためらわないし、情が入る余地もない。銃を向けて無駄にためて、撃つ直前に何かしらの邪魔が入り助かる、なんて事は一切ない。アンジェイワイダの『カティンの森』の銃殺の流れ作業も思い出してしまったり。それだけ銃という武器の前で、日常生活を送る人間は無力。綺麗事や救いなんてない、そう感じる事ができる説得力がある。

多くの説明がなく、ドキュメンタリーのように淡々と進んでいく。衝撃のオープニングで、どこで事件が起きるのか、ひたすら息を呑み、見守り続けた。77分という短さだけど、重い衝撃を受けるには十分だった。
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