洋梨

永遠の0の洋梨のレビュー・感想・評価

永遠の0(2013年製作の映画)
3.5
 特撮は凄い。VT信管付対空砲弾によって目標に辿り着く遥か手前で易々と薙ぎ払われ、戦果を上げられなくなった特攻。煩悶を経て決意した敵艦突入なのに、いとも簡単に撃ち落とされる搭乗員の無念を特撮が上手く表現している。夏八木勲、岡田准一も熱演だ。
 では、この映画が心に残る1本かというと一寸違うような気がする。証言の内容が有り物から持って来た二次創作のため何処か浅薄なのと、演出と編集が冗長でくどい。ドラマ部分が戦争証言のドキュメンタリーに比べて薄味なのは仕方がないにしても、撃墜シーンの繰り返しには感動を煽ろうとする意図が透けて見えて少し興醒めした。
 本作に限った話ではないが、日本の戦争映画には「戦争は悲惨。二度と繰り返してはいけない」「今あるのは英霊の尊い犠牲のお蔭」という誰も反論できない結論に一足飛びに帰結するものが多過ぎる。その結論に至る過程を丁寧に作り込むことで、無謀な戦争を始めてしまった理由、特攻までせざるを得ない戦況になっても終えられなかった理由が伝わる作品が観たい。そうでなければ、感動を消費するための装置に戦争が利用されているようで、どこか釈然としない。
 半可通な級友との論争とそれを変人視するギャルとの合コンシーンは、いかにも在りそうな感じが良かったね。
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