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わたしはロランスのbennoのレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
4.2
トランスジェンダーの国語教師ロランスがある日「女性になりたい」とカミングアウトし、そのことによって変化していく彼?(彼女)、恋人フレッド、家族の関係を描いた作品

素敵なシーンが沢山あるのですが…
特に、バスタブに腰を掛けてマスカラを塗るロランスを見て、涙を浮かべながら笑顔で微笑み返すフレッド… 切な過ぎます

ジェンダー問題では先進国であるフランスでも当時80年代では、まだ周囲の理解が追いつかずロランスも厳しい現実を受け止めざるを得なくなり、学校を追われることとなります ≪Monsieur, Madame≫(ムッシュ、マダム)と前置きをし、
≪ecce homo≫と意味深な言葉を残して去ります
聖書にある言葉で「この人を見よ」という意味 つまりは、その人の本質を見よという言葉です

ロランスとフレッドはその後別れを経て、また再会を果たすのですが… 上手くいきません
Lorsqu’il lui demande ce qu’elle ≪veut≫, elle lui répond avec une gifle,
≪un homme!≫
口論になり、「何を望んでいるの?」と問うロランスに対し、フレッドは平手打ちをし「男を求めているの」…と

あ〜あ、言っちゃった… もう切なさを越えて落胆です
終始 苦しい… 作品ですが、グザヴィエ・ドラン監督の水、カラフルな衣類、落ち葉が大量に降って来る演出(ひとつ間違えればコントですが) 、色彩を使った感情表現の映像化など、とても美しくて心が震えます

個人的にはフレッドに感情移入してしまい
常に C’est pas grave! C’est pas grave!
大丈夫、大丈夫!って心の中で唱えてました ロランスの母親もいい味出してます

苦しいけれど、それでもまた観たくなる映画です
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