AzumiNagasaki

わたしはロランスのAzumiNagasakiのレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
4.8
こ れ は … ! ! !




もしも恋人が性同一性障害だったら?

突然彼氏であるロランスに、女の心をもった男であることに苦しんでいる、とカミングアウトされたフレッド。
まだまだセクシャルマイノリティーに対する理解の浅かった80〜90年代、フレッドはさまざまな葛藤とたたかいながら、彼に協力することを決意するが…


最初はフレッドのおしゃべりなところに嫌悪感を覚えていたけれど、だんだんと彼女の悩んでいる姿に感情移入できるようになり、最後はだいすきになっていた…!

ロランスが女性として生きるようになり、周囲の反応や対応がキツくなっていくところも丁寧に描かれている。
冒頭のスローモーションは、そういうことか、と合点がいく。

特に良かったのは家族の心情の変化。
母親の感情の揺れっぷりには観ているこちらも動揺させられた。
すごく些細な気持ちの変化を、上手に演出する監督なんだなぁ。

周囲から奇異の目に晒される、あの視線の鋭さ。
1カット1カットが鮮烈で、色彩や光彩のセンスも抜群。
音楽のチョイスも絶妙。
4:3での撮影も、ほんのりと古臭さが出ていて良かった。

時が経つにつれ、ロランスがエレガントになっていく姿が感慨深い。
自分に正直に生きることがあんなにも苦しいことだとは。
LGBTが受け入れられつつあるとは言え、まだまだわからないことも多い。
(異性の体で生まれつつ、セックスの対象はやはり異性だったり、出会いのシーンなんか男前すぎるやろと思ったり…フ、ク、ザ、ツ)

不謹慎と思われたくないのですが、監督自身がゲイということもあり、これだけ繊細な作品に仕上がったのかしら。
(それにしても、ゲイの方の美意識の高さには感服します)

映画でも本でも音楽でも、良い作品の肝は「余韻」だと思ってます。
今作ももちろん、鑑賞後の余韻が心地良い。
印象的なシーンが多くてすぐに思い出すことができる。
ロランスが号泣しながら電話をかけるところ、泣けたな〜…

わたしのレビュー宜しく168分と長いのが玉に瑕ですが、人生の一本になりそうです。
スクリーンで見たかった…!
いつかまた上映してくれる劇場があることを願いつつ。

ああドラン様…!(礼拝)
AzumiNagasaki

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