洋梨

ゼロ・グラビティの洋梨のレビュー・感想・評価

ゼロ・グラビティ(2013年製作の映画)
5.0
中学か高校の頃、現国の教科書に載っていた話を今でも覚えている。宇宙飛行士が事故に遭って吹き飛ばされ、地球に落下して燃え尽きる間にこれまでの人生を振り返るという筋だった。確か海外SFだったと思うが作家名は忘れてしまった。絶対に助かりっこない圧倒的な絶望に直面して、死までの間人は何を思うのかというテーマだったのだろうが、作家がどんなに文章で技巧を凝らしても、此方は理系方面には昆虫程の想像力しか持たないボンクラ文系であるから、圧倒的な絶望と言われても今一つピンとこなかった。
それから30数年経って本作をIMAX字幕3Dで鑑賞したが、寄る年波で一層ボンクラに拍車がかかった俺でも、圧倒的な絶望とはこういうものかと思い知らされた。超長回しの多用が絶望感を煽り立て、物理演算で設計された宇宙ステーション崩壊シーンで頂点に達する(エンドロールに「シミュレーション・アーティスト」という肩書があった!)。いやはや凄まじい映像体験だった。
エポックメイキングという言葉がある。「○○以前、以後」と評される画期的な創造のことであるが、○○に入るのは、戦争映画であれば「プライベート・ライアン」であろうし、漫画であれば「手塚治虫」や「大友克洋」であろう。本作は間違いなく○○の中に入る作品だ。それがSF映画なのか、それとも映画という範疇そのものなのか。おそらくは後者に違いない。
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