アベ二ティKazumaAbe

ジーア/悲劇のスーパーモデルのアベ二ティKazumaAbeのレビュー・感想・評価

4.3
実話元の作品。周囲の証言が全然一致しない、故に重層的な魅力に満ちた人物をアンジェリーナ・ジョリーが演じ切る。文字通り裸での堂々とした立ち舞い、性に縛られず、愛を求めて真剣かつ奔放に生きた様が眩しい。

母親にその美しさを讃えられて育った少女は、どんな状況に陥ろうとも“ジア”であり続ける。薬物で壊れ、AIDSで窶れても自らを失わない。愚昧か高潔か、何とも割り切れない複雑な人間性を蠱惑的な肉体、視線の強さ(目でぶっ殺されそう!)で体現するジョリーのカリスマ性が凄まじい。一方で「あたしの望みって何…?」「Thank you and fuck you ! 」と彼女の内面性を表現する台詞がさらっと流れるところも心憎い。

類似作で『バスキア』を想像したが、彼女の所業が「呪われた天才故の〜」みたいな美談に仕立て上げられていない所は美点。常にアイデンティティを模索する彼女の在り方、仕事すらままならなくなっていく様子をしっかり画面に収めるのは一個人の生を描くドラマとしてかなり誠実。暗転する前の若干取って付けたようなスローモーションとか露骨にTVっぽいなあ…(実際テレビ映画だった)と感じたけど、結論 : 対象へのアプローチがちゃんとした凄く良い作品だと思いました ←小並感。