Angiii

ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズのAngiiiのレビュー・感想・評価

5.0
まさか映画館で『MISHIMA』というタイトルを見かけるとは思わなかったので駆け込み鑑賞。一昨年新文芸坐にて行われた三島由紀夫特集の流れを個人的に汲みつつ、多作品多角度によって『三島由紀夫』という人物像を探る旅もここにて一段落か。

運命の1125を現在視点に置き、三島一人称のモノローグで描画された精神的/肉体的過去、呼応する内在思想を反射した作品群を劇中劇にてシームレスにつなぐことで彼の生から死までを一連の夢夜のように(実に巧妙に!)美しく儚く描き出している。肉親による"男体性"への否定を根とした"聖セバスティアンの殉職"によるエロスへの目覚め、思想や言葉の行動化としての【憂国】や【薔薇刑】の作成から楯の会結成まで、彼の核となる精神やそれを脅かす/確固たるものとするイベントを明確に表しており、かなり芸術的なな装飾もされつつ彼の一生を掻い摘むにはかなり良い作品なのではないかと感じた。

石岡瑛子による劇中劇もこの上なく美しく、『落下の王国』を見逃して悔し涙を飲んでいた過去の私が救われた気がする。特に『奔馬』の純白の埋もれた鳥居と純黒の学生服(学生帽)の組み合わせはかなり禁忌的な香りのする耽美であり(そしてそれは801やライチ☆光クラブのような可憐な少年たちの無残な死を美とする心として受け継がれている)、学ランと学生帽って最高だなぁと涎が垂れそうになるなどした。

フランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカスの名をオープニングにて目にするは思わなかったし映画館も現地の人々でほぼ満席であることに驚いたが、三島由紀夫という存在の日本に留まらぬ影響力を再確認することができた。そしてフィリップ・グラスの音楽によって神聖なまでに纏められた生と死、言葉と行動が一体となった三島の世界はあの美しき日の出によって永久に象徴されるのであろう。
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