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鳳鳴 フォン・ミン 中国の記憶のmhのレビュー・感想・評価

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ワン・ビンの二作目はインタビュードキュメンタリー。
ソファーを中心に部屋全体がわかるカットと、鳳鳴(Yang Wang、フォンミン)おばあさんの全身を捉えたカットがほとんど。昼過ぎにインタビュースタートとなって、暗くなって、蛍光灯をつけて話し続ける。ソファーに座った老作家がその人生を三時間話し続けるという思い切った構成。
これで最後までずっと面白いのは、おばあさんの語り口が尋常じゃないうまさだからこそなんだけど、それを見抜いて頼り切ったワン・ビンもすごい。
話は主に、
・中国共産主義革命(国共内戦の終結)
・百花斉放百家争鳴
・反右派闘争(下放含む)
・労働改造(という名の反体制刈り)
について。
ようやく名誉回復したのに、文化大革命がはじまると「レッテルの外れた右派」という扱いを受けて、再び批判大会の俎上に上げられる。
北朝鮮でやってる公開処刑がない代わりに、中国はこの批判大会をやってるんだろうね。
抜き打ちの戸籍検問(でピンチに陥ったけど、親戚だったので助かった)とか、農村部は纏足文化で農作業におけるひざあては生活必需品レベルとか、細部も興味深かった。
(そうか、この戸籍検問があるから、「三姉妹」に登場するような不毛な地から動けない。ので、出稼ぎにいくしかないわけだね。閑話休題)
重労働はなれてるけど、どういうわけか粉挽きでめまいがするとか、リアリティがすごいプロットだった。(体験談なので当たり前なんだけど)
最後のほう(母を失うくだりのあたり)は、大躍進政策(大飢饉)についてだったのかな?
このあたりは映画にもなってなくて、どっからとりかかればいいのかまるでわからんね。
中共が怖くて誰も声にできないけど、誰かが書き残さないといけないというモチベーションでおばあさんは本に書き記し、それをワンビンが映像に収めたという流れになってる。
ワン・ビンの映画見るたび思うけど、こんなん作って大丈夫なの?
のちにものにする「無言歌」のエッセンスも詰まってた。
極めて視聴困難なんだけど、港区図書館で借りれたので、機会があたらぜひとも!
めちゃ面白かった!
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