ぱきら

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンのぱきらのレビュー・感想・評価

3.0
きつい
おそらく観るほうの立場や環境などなどによって感想が違い過ぎる
主婦の仕事や、女性や性別における役割に対する、個々人の体験的な印象によっても違うでしょう

語弊のある言い方になってしまうのかもしれませんが、自分はそれらや生活というものに大変重いものであるという気持ちを常に持っているので、長尺の映像でそれらの重さをストレートに提示されるのは大変しんどかったです

途中寝てたと思うんですけど、もう一度観るのがきつい
最後もきつい
よくわかんなくて検索して、既に故人になっている監督の生前のこの作品に対する言葉を読んで、主人公が最後の行動に至る理由を読んでまた、更につらい
もう無理
基本的に肉体が精神を裏切る展開がとても個人的にも無理なので、もうほんと無理
三番目の客との長い行為のシーンも無理
ある種の称賛ではありますが、気持ち悪いものを気持ち悪く映してくれてしまっているので再び観るのは無理

でも環境やその人間が置かれている時によって違う感想を持つであろう映画なはずなので、今すぐは無理でも数年いや十数年など経てから自分がどう思うかを確認してみたいようには思います
ただ今すぐは無理

良い人間ぶりたいわけではなく、人が悪い目に合っているのを娯楽として消費するのがフィクションでも無理なんですが、更に言えば女性が女性であるとか自分で避けようのない事情だけを理由に悪い目に合ってるのを見せられるのが無理です
男女どちらにせよ自分の努力などでは避けようのない事情で悪い目に合っているようなフィクションは無理なのですが、それを更に詳細に言ってしまうなら、そしてきっと今こういうことを言うと怒られるのでしょうが、男性が男性であるがゆえに悪い目に合うという物語は成立しづらいのであまり見せられる必要がないので、女性が女性であるがゆえに酷い目に合っている物語に接してどうにもならない気持ちになってしまうのを自覚させられるというか
いや多分うまいこと表現できていない言葉になっているのですが

映像は、おそらく多くの人があらすじから受ける印象よりは整っているのではないでしょうか
隠しカメラはもっと見づらい画角になるのでそれを狙ったならこういうカメラ位置にならない
映画の撮り方を学んだ20代当時の監督が、分かりやすい撮影方法で伝えてきている内容というか

三時間越えが非常に長いことは確かなので、個人的にはスターチャンネルの配信で観たのがちょうど良かったのは事実
というか、ほぼこの作品が観たいというか確認したいがためにスターチャンネルの体験に加入しました
この作品が英国映画協会の開催したランキングで一位に選出されたからです
昨年や今年(2024)あたりにこの映画を観た人間はほぼそれが理由でこの作品に接しているのではないでしょうか
この作品のレベルが低いとは全く思っていないのでランキングのなかに選出されたこと自体に異論はないのですが、1975年のベルギー制作の作品が、なぜ一位にこのタイミングでなったのかに関しては何か英国で再評価のきっかけでもあったのかというあたりの事情があるなら知りたいです
あとこのランキング50位くらいまでの作品名を確認して、半分くらいは納得だけど半分は納得できなかったりするので、この批評家等の人たちが選ぶランキングよりは映画監督が選ぶというほうが納得だなと自分としては思いました

そして今2024年前半の日本でこの映画に触れた自分としては、1975年の欧州でもこうだったんだな、1925年でもなく1950年でもなく、太平洋戦争前でもなく、という失望というか絶望とでもいう感触が率直な気持ちです
半世紀も経たないくらい以前の時代の欧州でこの感じなら、現代日本の感じはきっとまだまだなんだな
日本が常に欧米よりも遅れているというよりは、戦後は欧米の歴史を辿るやり方でしか日本が過ごしていないという怒りと絶望によってそう思うわけですが
希望を少し託すならMetooがあってネットがあって、の世界ではあるので、ここから更に半世紀などはかからずもう少し感覚が進んだり改善されたりするかもしれない、というくらいでしょう

それでも自分の希望としては、昔のことだから正しく伝えられなかったり無かったことにされず、歴史は正しく伝えられていくことです
こういう歴史があって、改善された世界がある、ということを人々が正しく認識している状態というか
他の世代のことなど知らない、という状態でなく、歴史を踏まえて人間がある状態であってほしい
何の不均衡もない歴史など自分の生まれてこれまでも味わってきていないからこそ、ここ数十年の日本の歴史も正しく語り継がれてほしい
でも昭和後期や平成の近現代史でもまともに伝えられていないのを、自分が大人になったからこそ感じるので、許せない
いつどうであっても歴史には意味があってそこから学ばないといけないことはたくさんあるので
自分の身にこれまで起きている理不尽なことと重ねて考えるほどにきつい
ただ一人の女性が、細かいことも語らずただ動いているだけの作りだからこそ観ているほうが色々その余白に考える感じの映画なので、きつい
ぱきら

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