ベティー

国家誘拐/レンディションのベティーのレビュー・感想・評価

国家誘拐/レンディション(2007年製作の映画)
4.0
対テロ戦争の末路。アメリカが実際に行っていたらしい国家的な誘拐、監禁拷問を描く。
ブッシュ政権下のテロとの戦いで気が狂ったアメリカの様相、鬼畜米国を知る良作では?24とかアメコミ好きな方に、腐りきったアメリカもぜひ。

とある北アフリカで自爆テロ事件が発生。CIA支局員他一般市民多数が殺害される。犯行グループの関係者として目をつけられたのがアメリカ在住のエジプト人。彼はワシントンの空港で突然警官に拉致され、そのまま北アフリカに強制移送、監禁、拷問を受けることになるが、はたして彼は本当にクロなのか?

起訴されることも、裁判を受けることもなく誘拐監禁される。これがレンディションという「特別送致」というものらしく、信じがたいが合法?らしい。テロリストと疑わしき人物を密かに逮捕監禁して拷問してよいという、、迷走、泥沼としかいいようがない、すくいようのない対策。
テロとの戦いの困難さ、不毛さがよくわかる。結局普通の戦争と違ってだれが敵かわからないわけですからね。。闘う相手を特定する戦いみたいになってしまうと、もはや戦争にはみえない。その打開策がこれですか。ああ、超えちゃいけないラインを国家が超えてしまいましたねアメリカ、という感じ。報復につぐ報復。生まれる冤罪、憎しみの負の無限ループ。解決策が見えないにしても、この方法は違うとしかいいようがない。2007年作品らしいが、戦いに疲れた頃にでるべくして出た映画なのかな?という印象。

描かれるのはいずれ劣らぬ狂信者たち。非ムスリムを悪とし、奴らの首を切り落とせば救いと説くテロ組織。対するは、疑わしきは拉致監禁、素っ裸にして拷問すら大勢を救う大義と私は信じています、というメリル・ストリープ演じる役人がテログループ同様の対テロ戦争妄信者にしか見えない。

そのなかで主人公だけが、唯一まともというか、第三者的な視点として描かれていて以外とみやすい作り。
情報を得る手段として考えたときの拷問という選択肢の信憑性やリスクなどの考察のシーンは興味深い。
日本で劇場未公開なのね、もったいない!拷問シーンも取り立て残虐描写もないのに。反米すぎるせい?惜しい。Huluで観た。

私的には特に反米でも保守でもないのですが、政治的歴史的に観てもおもしろいし、普通にクライムサスペンスのように観ても、ラストの衝撃といいかなり好き。出演者も豪華だし。
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