松浦義英

水のないプールの松浦義英のレビュー・感想・評価

水のないプール(1982年製作の映画)
3.0
23.11.06:Amazon Prime Video。

にっかつロマンポルノにでもなりそうなんだけど、ならない所を的確に突いてる感じ。
だから、全体的・個人的には『青春の殺人者』の方が足がついてる感じで好きかな。
…この題材、監督だけ大島渚にしたらどうなるのかめっちゃ気になる。
若松孝二らしい、現実の事件から着想を得た物語。

水のないプールの底とへりの部分で高低差を演出したのは空気循環の暗喩だよね。
だからこそラストシーンの内田裕也はプールの底で大股開きになって舌を出したんだよね。
…女性の顔・汗の撮り方がちゃんと若松孝二で画が決まりすぎて芸術だった。
養命酒とか、射精する内田裕也の目の演技とか…これぞ若松孝二だったね。
銀のマスクは内田裕也本人のキャラ性と上手くマッチしていたね。
ラストの?冒頭の?オチとか、家事を完璧にこなす強姦魔っていうズレが、
逆に犯罪心理学の観点からいうと珍しい話じゃないっていうね。

クロロホルムの効果を部屋サイズで客観視出来るのが後半というのが、
それまでの犯行をファンタジーっぽくしてしまっているので少し残念。
カエルの大股開きが前半にあるから理解は出来るんだけどね。
(でも時々、クロロホルムを使った強姦事件は発生してるしね…効果はあるんだろうね)

クロロホルム注射器がピューピューしているのは射精のメタファーですよね。
(実際の事件では、鍵穴からの注入とのこと、これも暗喩できる恐怖)
だから先に射精しているわけで…強姦魔の気持ちはやっぱり中々理解出来ないですね…。
(あとあの、無修正のあれ、ボカシがなくてビックリした。
内田裕也はボカシあったのに。
…一般的な男性の経験等は知らないんだけど、俺はあのシーンで昔の経験を思い出してなんとも言えない気持ちになった)

沢田研二が妙にカッコいい若頭?だったり、
安岡力也がイメージそのままだったり、
タモリがまだタモリ口調じゃなかったり、
赤塚不二夫が妙に印象に残る方言使っていたり…
緩急が上手い監督ってやっぱり凄いよね。
松浦義英

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