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キャプテン・フィリップスのnao14000605のレビュー・感想・評価

キャプテン・フィリップス(2013年製作の映画)
3.9
リアルで良い。演技力も素晴らしい。緊迫感がある。なぜ貨物船側が武器を使って反撃できないのだろう。銃で応戦すればこのような面倒な事にはならなかった。ソマリアがこのように無政府状態になっているのは、過去100年以上に渡る欧米の介入が原因である。以下、ソマリアの歴史。

・19世紀後半、航路として重要であったため、イギリスはソマリア北部を支配。
・続いてフランスも隣国ジブチを支配。
・イタリアもソマリア南部を保護国に。
・1960年、イギリス領とイタリア領が一つの国として独立。しかし新政府に協力しない地方勢力もいた。
・1969年に大統領が暗殺され混乱状態。
・クーデターで社会主義の軍事政権が誕生。
・ソマリアにソ連が経済援助。ソマリアの港にはソ連の軍艦。
・1970年代後半、ソマリアは隣国エチオピアに住むソマリ系住民の反乱を支持し、戦争状態に。
・ソ連はエチオピア側についたため、ソマリアはソ連から離れてアメリカ側に転じた。ソマリアの港にはアメリカの軍艦が出入りするようになった。
・ソ連もアメリカもソマリア政府に多額の支援を与えた。資金は政府上層部とその配下の人々に分配され、地方勢力は不満。
・1991年のソ連消滅により、アメリカがソマリアに金をやる必要もなくなり、中央政府は弱体化し、内戦に突入。アメリカやソ連の供給した武器や金で内戦状態に。
・北部は旧イギリス領の国境を復活させ、別の国(ソマリランド)として独立を宣言。
・1992年、内戦収拾のため、米軍が国連軍としてソマリアに。
・1993年、米軍は国連軍に敵対するアイディード将軍を首都モガディシオで襲撃するが、失敗して18人の米兵が殺された(ソマリ人の死者は500-1000人)。
・米軍は撤退。ソマリアは再び内戦の混乱に陥ったものの、内戦はその後、小康状態となり、いくつもの地方勢力によって分割統治される状態が続いた。
・2001年、ソマリアがアルカイダと関係しているという根拠なき言い掛かりにより、アメリカから金融制裁、禁輸措置を受ける。ただでさえ悪い経済状況が更に悪化。
・2008年の食料価格の高騰など、破たんしていた経済にさらなる追い打ちが続き、人口約870万人のうち、320万人が生活支援を必要とする状況。

ソマリア人たちの絶望というのは、大国に翻弄されて、貧困から抜け出せない状況が続く事だ。犯罪に走り、更に戻っても別のソマリア人たちに搾取される現実がある事だ。最近は海賊行為の取締が厳しくなり、かなり発生頻度は減っているが、アフリカの持つ絶望は続く。この映画を観て「黒人たちが殺されたから良かった」というだけでは現実は見えてこない。
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