このレビューはネタバレを含みます
風立ちぬのラストシーン、菜穂子が天国のような空間で二郎に対して言う言葉、「生きて。生きて。」が「来て。来て。」と真逆の台詞だったことが最も衝撃だった。駿はナウシカの頃からすでに「どんなに希望のない世界でも生きることをやめない」というメッセージを込めていたのに、引退作において二郎を死に向かわせようとしていたのは注目すべき事実。
自らの人生を賭けて設計した零戦は当時最も優れた性能を誇ったが、一機も日本に帰ってこなかった。最愛の妻も亡くしてしまった。何もかも全て失った二郎にそれでも生きろと言うのは駿にとって相当辛い選択だったのだろう。だから菜穂子と一緒にしてあげることが物語のエンディングにふさわしいと一時は考えたのではないだろうか。