茶番

渇き。の茶番のネタバレレビュー・内容・結末

渇き。(2013年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

潮水を飲んでいるような、果てしない渇き。

「なんでみんな夢中になるの?」という遠藤の問い。出会った人々が皆、加奈子に中毒になるのは何故か? それは潮水を飲んでいる感覚に近い。飲み込んだ感覚はあるのにどうにも満たされず、むしろもっと強い渇きを覚え、さらにたくさん飲み込もうとする。知らぬ間に、人々は加奈子という底なし沼のようなものにハマってゆく。

人間は答えや真実を探すことが好きで、それを何事にも求めがちになる。しかし加奈子は空っぽなのだ。いくら追いかけても、そこには何もない。無感情というわけでもないのだが。彼女が空っぽな部分は劇中で東が指摘したように頭と胸の奥にある、理性と愛ではないか。

人々から加奈子に集まるのは、愛に似た羨望という紛い物。本当の愛とは何か。加奈子にとっての愛とは何か。彼女が口にする「アイシテル」は、子供が覚えたての言葉を使いたがる感覚に近いものを感じる。意味もわからず、ただその言葉を使ってみたい、自分のものにしたような感覚を味わいたいだけ。加奈子の「アイシテル」はカラカラと空っぽな音を立てて劇中を転がり回る。



パーティーのシーンお気に入り。軽やかで滑稽で、カラフルでぐっちゃぐちゃで、でんでんぱっしょん。
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