こばやかわ

インターステラーのこばやかわのレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
4.7
4度目くらい。久しぶりに鑑賞しました。

観るたびに感想がぜんぜん変わる。
映像、音、役者にも感動するけど、それは初めて観た時と変わらない印象。
変わるのはテーマの受け取り方。

以下、記録のため。ネタバレ注意。

さて、今回観た感想は、こう。
「(僕は)ブランド教授を批判できない」
です。
反対意見多そう…笑

そもそもあらすじは、こう。
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近未来の地球。植物の激減と食糧難で滅亡の危機に瀕した人類は、居住可能な惑星を求めて宇宙の彼方に調査隊を送り込む。クルーの1人として選ばれた男性(クーパー)は、もう会えないと泣きじゃくる娘(マーフ)に必ず戻ると約束して、過酷なミッションに挑む。
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で、今回印象に残ったのが、これ。
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ミッション名は『ラザロ計画』

ミッション最高指揮官のブランド教授いわく、2つのプランがあると説明。

【プランA】
宇宙ステーションを建設して地球外へ脱出し、他の惑星に人類が移住するプラン。しかし巨大な建造物を打ち上げるには、重力をコントロールするための方程式を見つける必要がある。その方程式はまだ未完成ながら、ブランド教授はクーパーに「君たちが地球に戻るまでには必ず解いてみせる」と約束する。

【プランB】
万が一、方程式が解けなかった場合のためのバックアップ・プラン。受精間もない卵子を保管庫に入れて厳重に管理し、移住先の惑星で人口培養する計画。あくまで種の保存のための計画であり、地球に残された人類は助からない。

ブランド教授はクーパーにこう伝える。
「宇宙へ行け。そして子どもたちを救うんだ」

クーパーたちが宇宙に向かってから25年の月日が経ち
、体は弱って車いすを使用するようになる。
そして、ブランド教授は死の時を迎える。
死の間際、大人になったマーフを呼び出してこう伝える。
「君に隠していたことがある。本当はプランAが実現不可能なことはずっと前から分かっていた。本当に申し訳ない」と。
クーパーが宇宙に向かう前から方程式が解けないことはわかっており、宇宙で人類の受精卵を培養する方法(プランB)を遂行させるためにクーパーたちを宇宙に送り出していたのだった。

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ブランド教授は分かっていました。

人は自らを犠牲にしてまで、
人類という種を救おうとはしない。
家族を守る。

だからブランド教授は
地球の家族も助けることができると期待を持たせるために『プランA』という嘘をつき、プランBを実行しようとしました。

『正義』を議論するときに出てくるトロッコ問題に似てるのかなー、と思いました。

愛する人を守ることを選択するか。
種を全体とした最適を選択するか。

もっと分解すると、

人類種を犠牲にして、愛する人と過ごしたいのか。
愛する人を犠牲にして、人類種を救いたいのか。

人類種を犠牲にして、愛する人と過ごすべきなのか。
愛する人を犠牲にして、人類種を救うべきなのか。

欲求と義務?したいこととすべきこと?
なんと形容すべきかしっくりこないけど、とりあえずこの(フワッとしてますが)2つの葛藤があると思いました。

ブランド教授には愛する娘のアメリアがおり、クーパーと共に宇宙に飛び立ちました。種の保存のために娘にまで嘘をついて危険に晒してます。
また一方で、ブランド教授は老いた身体で失うものが少なかったのかも知れない。

種の保存を選択したブランド教授のやり方は卑怯ではある。
けれど、「人は愛する人を選ぶ」と諦めているなか、種の保存が最重要課題に据えられた場合、これしか選択肢がなかったんだと思いました。
まあ、そこまでして種を保存すべき?っていう議論になるとは思いますが。

ん〜、独りよがりなのか善意なのか。
ブランド教授のその選択に至るまでの経緯は分からないけれど、その選択の文脈は置いといて、その選択自体には同意したくなるんだよな…、と。
かといって自分の愛する人が巻き込まれたら許さないんだろうけどね。
難しい問題です。
こばやかわ

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