大根山のたぬき

インターステラーの大根山のたぬきのレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
5.0
現在、この映画が自分が見てきた映画の中でNo.1である。これから先、この映画を超えるものが出てくるかもしれないが、確実に史上最高のSF映画と自信を持って言える。この映画を劇場で見た時の衝撃は二度と忘れない。あんぐりと口を開けながら『これは、とんでもない傑作だ』と呆然としながら、エンドロールのハンス・ジマーの音楽に酔いしれていた。あの時は家に帰った後も興奮して、次の日の学校の授業で爆睡してしまったのを覚えている。(笑)


近未来、地球規模の食糧難と環境変化によって人類滅亡のカウントダウンが進んでいた。そんな状況で、あるミッションの遂行者に元エンジニアの男が抜擢される。そのミッションとは、宇宙で新たに発見された未開地へ旅立つというものだった。地球に残さねばならない家族と人類滅亡の回避、二つの間で葛藤する男。悩み抜いた果てに、彼は家族に帰還を約束し、前人未到の新天地を目指すことを決意して宇宙船へと乗り込む。

まず、僕はクリストファー・ノーラン 監督が大好きである。彼の作る映画は重厚感があり、壮大で迫力がある。そして映像もとても計算されていて、なによりCGを使わずに出来る限り実際にやっちゃうのが素晴らしい。毎回新作が出るたびに、『今回はどんな無茶するんだ』という期待感を募らせている。今回のインターステラーでは、宇宙船、マン博士の惑星、とうもろこし畑などの全部CGで片付けられるのに、出来るだけグリーンバックを使わずにリアリティを求めている。現在の映画界では全てCGを使って撮影したり、亡くなった俳優もCGを使ってスクリーンに復活させることができるくらい、CGに頼り切っている。CGなしでは何も作れないぐらい甘えてしまっている。もちろん今作のようにほぼCGを使っていない映画もあるが、数が多いとは言えないだろう。しかし、ノーランは実際にやってしまうのが、破天荒とも思える。しかし、そこに映像のリアリティが生まれ、暗く重厚感のあるノーラン スタイルの映画が出来上がっている。そのようなノーラン スタイルはダークナイト 以降に多くの監督が影響され、最近ではそのような重苦しく、暗い映画でも大ヒットするような時代になった。特に例を挙げるなら007シリーズだろう。007シリーズはかつては『スカッと爽快』というのが当たり前だったが、ダニエル・クレイグ版に入ってから重く、シリアスになっていった。そしてダークナイト の影響をもろに受けてしまったのが『スカイフォール』である。あれも大好きな映画の一つだが、初めて見た時は『007版ダークナイト じゃん』と思ってしまった。そして、結果的にシリーズ史上最高の成績を収めた。またその後も『スペクター』、来年公開される新作に直接続いているあたりは、ダークナイト 三部作の影響が現れている。(カジノロワイヤルと慰めの報酬も話は繋がっているが、スカイフォール以降との直接的な繋がりは少ないため、今回は例外とする。)

思いっきり話は逸れてしまったが、そんな映画の歴史を変えてしまったノーラン が個人的には傑作だと思っている『ダークナイト ライジング』というヒーロー映画の後に放ったのが、SF濃度100%の今作である。

今作が素晴らしいところは、徹底的にリアリティを求めた脚本である。この映画はSF映画ではあるが、実際、これから先に『起こりうる可能性のあるストーリー』である。ちゃんとした専門家が脚本を監修しているため、非常にリアリティがあり、まるで自分が宇宙に旅立ったような錯覚が現れる。また、ブラックホールのリアルな形や相対性理論や重力などの、今までのSF映画では、『別にそこは気にしなくていいや』と放置気味だった部分を徹底的に映画に入れ込み、非常に高いリアリティを生んでいるのだ。

そして今作には非常にSFファンがニヤニヤするような演出がたくさん詰まっている。
まずはTARSとCASEのデザインだ。あのデザインはまさに『2001年宇宙の旅』のモノリスにそっくりである。映像の中にも、キューブリック感を出させるような撮影や演出、デザインが成されている。また、ドッキングのシーンや終盤のまさかの展開などのSFファンが大喜びする演出が今作に成されているのだ。

また、今作をさらに引き立てているのが、ハンス・ジマーの音楽である。SF映画には合わないようなパイプオルガンのサントラが、余計に映画に壮大感と迫力を演出しており、今作にしか合わない化学反応を引き起こしている。聞くだけで宇宙に連れて行ってくれるような気がする。

また今作は、SF映画であるにもかかわらず、ヒューマンドラマも素晴らしい。この映画はSF濃度100%であるが、テーマは『愛』なのである。主人公クーパーと娘のマーフとの親子の愛、アメリアとブランド教授の親子の愛、アメリアとエドマンズの愛、などの『愛』がこの映画の本筋である。どんなに遠くに離れようが、時間が経とうが、何次元先に行こうが、『愛』だけはどこに行っても通用する観測可能なものである。そしてその『愛』がのちにクーパーたちに奇跡を起こすことになる。その『愛』があるため、SF映画なのに号泣する演出と終盤のまさかの大どんでん返しかつ伏線大回収の脚本には、本当に素晴らしいの言葉だけでは説明がつかない。

と言ったようにベタ褒めしているが、賛否は分かれる作品かもしれない。でも僕は劇場で全身に鳥肌が立つくらいの衝撃を受けた。中にはお気に召さない人もいるかもしれないが、それも一つの意見であり、価値観でもある。否定はしない。
ただこの映画を見る際には劇場ではもうやっていないので、ヘッドフォンの大音量で部屋を暗くし、大きいテレビで見てほしい。それだけでも今作の感じ方は大きく違ってくる。僕は生きている間にこの映画を劇場で見れたのは一生の財産の一つである。
また、3時間近くある映画だが、役者の素晴らしい演技と素晴らしい映像、息をつかせぬ展開の連続で退屈はしないだろう。

あと、マッド・デイモンの史上最高の無駄使いにも注目してほしい(笑)

では、最高の宇宙体験をお楽しみに。





「マーフィーの法則は、起こり得ることは起こるって意味なんだ。それはすばらしいことだと思ったんだ」


「人類は地球で生まれた。だからといって地球で死ぬ必要はない」


「親になるというのは、子どもたちの未来の幽霊になることなんだ」

「愛してるよ、永遠に。聞いてるか?ずっと愛してる。戻ってくる。必ず戻ってくる」

「無欠の正直さでは、そつなく対応できない。感情を持つ存在とのコミュニケーションにおいて、安全な方法ではない」

「穏やかな夜に身を任せるな。老いた魂を燃やし、終わりゆく日に怒りをたぎらせろ。怒れ。怒れ。消えゆく光に」

「多分、愛は何かを意味してるのよ。私たちの理解を超えた何かを」

「感じるか?生存本能ってやつを。生存本能が俺を突き動かす。そして、われわれを救うんだ。私は人類を救う」

「運動の第三法則だ。前に進む時には何かを置いていかなければならない」

「そうだな。俺の正直レベルは90%だ」












「ユリイカ!」