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物語る私たちのeyebwのレビュー・感想・評価

物語る私たち(2012年製作の映画)
5.0
監督サラ・ポーリーの愛と知性の圧倒的な証明。
監督の母の生涯と監督自身の出生の秘密をめぐる家族の物語が、「物語ることとは何か」という問いについての物語へといつのまにか姿を変え、そしてその問いに対する監督自身の答えが、メタなしかけとして映画そのものの至る所に初めから埋め込まれているという手腕の鮮やかさには興奮を禁じえない。

物語られる対象の一人である父が物語る主体でもあり、さらに娘が父に物語らせていること、それに父がときおり抵抗することさえも物語に組み込んでしまうという重層性は、ドキュメンタリーにおけるナラティブの役割に対するラディカルな批判になっている。けれど、そんなことを考えず家族の悲喜劇として観ても十分に楽しめるところがこの作品の凄み。
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