のもちゃん

あなたを抱きしめる日までののもちゃんのレビュー・感想・評価

あなたを抱きしめる日まで(2013年製作の映画)
4.2
これまでの経歴や生き様が全く違う主役2人の、宗教や人生観に関する言葉に耳を傾けながら視聴した。
宗教を持たず、真実を追求し、悪いことは悪いこととして断罪したい元ジャーナリスト。いわば、私もそちら側。
第二次世界大戦後の実話にかかわらず、結婚していない未成年者の妊娠に対する世間の常識は、人としての温かい目を失い、信じる宗教における"正しい場所=修道院"での更生を当然とした。正しいはずの場所の実態を知ろうともせずに。それに乗じて行われていた修道院での悪事の数々。
フィロミナは、劣悪な状況の修道院で出産し、3年後に引き離された息子を50年後に娘に打ち明け、その後押しを得て、元ジャーナリストと息子探しの旅をする。
しかし、息子は数年前に死亡していた。同性愛者やエイズに対する世間のもっと冷たい仕打を受けた後に。
フィロミナは、あれ程宗教者からひどい目に合わされたのに、信心を捨てず、個々人を糾弾することもしない。なぜ?宗教って何?と、つくづく思った。
フィロミナと行動を共にすることで、徐々に元ジャーナリストの角が取れ、優しくなっていった事は、素直に嬉しかった。
カソリック神父の長年にわたる幼児性虐待が明るみに出たのは数年前。「宗教者は敬虔で立派。そんな方々に疑いを持ってはいけない。」大方の信仰者にはそんな暗黙の了解が有り、犯罪の発露に時間がかかった。
人としての優しさを忘れず、信じることで自分の迷いや辛さを減らす宗教だけが存在して欲しい。でも、多分、私は無神教のまま人生を全うする。
余談ですが、実は中高を仏教系の女子一貫校で学びました。理由は、実家から通学できる範囲で、程々の私立はそこだったから。毎朝の礼拝時間には、邪心だらけで手を合わせ、週一回の仏教の授業が大嫌いだった。それでも、その学校生徒としての3大目標「勤労・敬虔・高雅」は嫌いでは無かった。それどころか70歳に手が届きそうな今も、この目標に届きたいなぁ…と思いながら、日々を暮らしている。
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