かさい

クラッシュのかさいのネタバレレビュー・内容・結末

クラッシュ(1996年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

この映画に出てくる性癖(フェティシズム)はすごく多い。それらを分析して理解しようとすると、とんでもないことになる。試しにウィキペディアの「性的倒錯」から、この映画に少しでも当てはまる項目を以下に抜き出してみる。

1.エキシビショニズム(露出性愛)
2.エロトフォノフィリア(殺人性愛)
3.サディズム(加虐性愛)
4.サドマゾヒズム(加虐被虐性愛)
5.スコプトフィリア(窃視性愛)
6.タナトフィリア(死性愛)
7.ハイブリストフィリア(犯罪性愛)
8.ハイポクシフィリア(窒息性愛)
9.マゾヒズム(被虐性愛)
10.スマトパラフィリア(四肢不一致症候群)
11.アポテムノフィリア(身体欠損性愛)
12.アベイショフィリア(身体障害性愛)
13.オルファクトフィリア(体臭性愛)
14.ネクロフィリア(屍体性愛)
15.フォレスキン・フェティシズム(包皮性愛)
16.フート・フェティシズム(脚部性愛)
17.ブレスト・フェティシズム(胸部性愛)
18.ミソフィリア(汚損性愛)
19.ピクトフィリア(画像性愛)
20.メカノフィリア(機械性愛)
21.アルゴラグニア(疼痛性愛)
22.オートアサシノフィリア(自己暗殺性愛)
23.カトプトロノフィリア(鏡像投影性愛)
24.トロイリズム(三者性愛)
25.ナレートフィリア(口述性愛)
26.バイストフィリア(強姦性愛)
27.フォボフィリア(恐怖性愛)

すごい数になった。これら27の項目が劇中では、「クラッシュ(衝突事故)」という1語で表現されている。簡単に抜き出しただけなので、専門的に検討すればさらに細分化されると思う。観劇中に脳がついていけなくなるのも当然だ。
ここで大事なのは、クラッシュがいかに性的興奮を引き起こすのかということではない。性的興奮を味わいたいだけなら、ただセックスをすればいい。登場人物たちはクラッシュ自体に対してたまらない興奮を感じる、ということだ。クラッシュの現場となった車内でセックスをしたり、クラッシュを引き起こした人間とセックスをしたりすることで、クラッシュの興奮を追体験しようとしている。セックスのためにクラッシュを求めるのではなく、クラッシュのためにセックスを求めているのだ。
登場人物の中で主人公の妻だけが、上記の例外として登場している。映画冒頭で主人公夫婦はセックスのマンネリ化に悩んでいる。夫を愛しているのに夫と上手く関係を持てないことに悩む妻。妻の目的はクラッシュではなく、ずっと夫その人なのである。妻は夫のためにクラッシュを求め続け、夫婦の暴走はラストの悲劇的なシーンへと辿り着く。
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