二兵

白痴の二兵のレビュー・感想・評価

白痴(1951年製作の映画)
4.0
19世紀ロシアの文豪・ドストエフスキーの五大長編のうちの一つを映画化。ついこの間原作を読んで、非常に面白かったので、その記憶が消えないうちにと鑑賞。

余談ですが、ドストエフスキーの作品では『罪と罰』がいちばん好きです。サスペンス小説としても楽しめるしね。

で、映画版の内容。序盤、やたらテロップが挿入されて、話が端折られてんなと思ったら、やっぱりカットされていたみたいで…黒澤明の有名な言葉『フィルムを縦に切れ!』はこの作品であるとのこと。

日本の北海道が舞台ではあるが、恐らく意図的に日本的な要素が、なるたけ排除されており、食事のシーンもパンやワインだったりするし、雪まつりの場面の呪術的な雰囲気など、ロシアっぽさを感じさせる場面多し。

ムイシュキン公爵=亀田・森雅之、ロゴージン=赤間・三船敏郎は流石の存在感だが、何と言ってもナスターシャ=那須妙子・原節子の風貌と演技が凄まじい。
常に黒い服を身に纏い、男どもを惑わせ、ときにヒステリックな笑い声をあげる。彼女の初登場シーンである写真の場面の目力、その後の本人登場(直前の森の表情でタメを見せてるところも良い)は、彼女がただならぬ存在であるかの様に演出されており、さながら魔女が降臨してきた様で、結構怖かった…。原節子といえば"白"のイメージなので、なかなか衝撃的。

2時間40分もの長丁場ではあるが、原作を読んでいた事と、黒澤演出を意識しながら観ていたので、飽きることは無かった。

とはいえ、原作もそうなんですが、いわゆるシリアスな笑いというか、演技が過剰過ぎてコメディーみたいになってしまっている箇所がチラホラ…。

終盤はもはや亀田と赤間の同性愛映画みたいになっていて、何というか…ただ、原作からも感じられた、あの場面の異様さが上手く醸し出されていて良かった。

ラスト、原作には無い、久我美子演じる綾子=アグラーヤの最後の台詞が切なかった。
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