チッコーネ

伝説のディヴァインのチッコーネのレビュー・感想・評価

伝説のディヴァイン(2013年製作の映画)
3.5
今年の東京レズビアン&ゲイ映画祭で、何か観ておくべき作品はあるかなと、ラインナップをチェック。
イスラエルの作品2本、『F to Mのポルノ男優/インターセクシャルの人々を追うドキュメンタリー』など、結構観てみたい作品が並ぶ。
最もGO GO BOYがどうの(アメリカ映画)とか、隠れゲイのカミングアウトがどうの(台湾映画)とかもあり、「いまだにこんな、所詮ゲイ映画をセレクトすんのかよ」という不満を覚えたが、予定調和が好きな腐マ●コ辺りからも金を巻き上げないといけないから、まぁしょうがない。
そんななか僕が選んだのは、ディヴァインのドキュメンタリー。
まだ本国でも未公開のようなので、手堅い選択かと思う。

ディヴァインは60年代後半にジョン・ウォーターズ監督のトラッシュ・ムービーで名を上げたカルトスターであり、70~80年代のディスコに君臨した、伝説的なドラァグクイーンでもある。
僕はディヴァインの代表作『ピンク・フラミンゴ』を始め、『マルティプル・マニアックス』、『ポリエステル』、『フィメール・トラブル』、そして『ヘアスプレー』などを鑑賞済みである。
また彼のベストCD(カラーコピーのジャケが有名なディスコ系再発レーベル・HOT PRODUCTIONの盤)、さらにジョン・ウォーターズの著作も所有している。
日本で入手できる彼の情報をよく収集したほうだと思っていたが、この作品を観て、やはり偏りのあることがわかった。
ディヴァインは真にアンダーグラウンドな存在であったため、全体を俯瞰してみると、抜け落ちた批評や実績が、数多く存在しているのだ。
本作には、ディヴァインを知るために有益な、以下の情報が含まれている。

・母親へのインタビュー
・舞台俳優としての活躍
・彼のプライベート(ゲイ)ライフの片鱗
・レイニー・カザンらと共演したメジャー映画の存在(日本未公開)
・死の直前に決まっていたファミリードラマへのキャスティング(男役だった)

ほかにもミンク・ストール(少なくとも『ピンク・フラミンゴ』では、ディヴァインより演技達者)や、リッキー・レイクなど、共演者へのインタビューが盛り込まれていて、大変興味深い。
メアリー・ヴィヴィアン・ピアスの容貌が恐ろしく劣化していたのにも、驚かされた。

また晩年に、彼がメジャーへの足がかりを
かなり確かなものにしていたことを確認できたのは、大きな収穫だったと思う。
「願えば夢は叶うのよ」という陳腐な美麗字句も、ディヴァインのように真に異端な存在の口からこぼれ落ちれば、立派な金言足り得るのだ。

(鑑賞時のブログより転載)