垂直落下式サミング

ONE PIECE ワンピース エピソード オブ メリー もうひとりの仲間の物語の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

2.8
原作のなかでも感動エピソードの代表格となっているけど、個人的には思い入れがないゴーイング・メリー号の最期。
ロビンは仲間で大事だけど、船は道具じゃねえか。そんなんで泣かねえよ。ああ、メリーよ死んじまったのか?そうか、いい奴だった。このくらいの割きりで旅してるほうが海賊らしいです。
メリー号を修繕するか乗り捨てるかでルフィ対ウソップのひと悶着あるのが、幼稚なケンカに思えちゃうんだよな。船長の方針が気に食わないって決闘するのは、ふたりの行き場のない感情同士がぶつかり合っているだけで、ここには守るべき信念がない。
怪物じみた強さを持つ仲間たちへのコンプレックスがついに弾けてしまったウソップと、青キジに惨敗した直後だから焦りを隠せていないルフィ。やり場のない焦燥のぶつけ合い、ただのチンピラ同士のタイマン。これは、見ていて辛いものがあった。
ワンピースの戦闘は表面上は感情的だけど、存外に理屈と理屈でぶつかり合っていることが多い。仲間を守るため、仁義を通すため、恩を返すため、正義を遂行するため、仇を討つため、目的は様々だが男の子マンガらしいロジックに基づいて戦っていながら、戦うことそれ事態は問題解決の手段でしかない。それのさっぱりしたバトルがよさだと思う。
だから、あまりにも人情派でかつファンタジックな船の妖精のはなしとか出されてもね…。そんなもんは、ボケジジイの寝言と同じで話半分に聴いときゃあいいんだ、くだらねえ。
でも、ウソップ脱退をめぐる一味の心理の動きはよかった。サンジくんの仲間思いな優しさ、ゾロの質実剛健な武人っぷり、どこまでも末っ子なチョッパー。それぞれの葛藤が描き分けられてる。
ここの時点では紅一点のナミが、男所帯の姉御役としてふたりのあいだに割って入ろうとするのだけど、不毛な意地の張り合いだから仲裁しようにもどうすることもできない。ふだん強気だけど、仲間のことで追い込まれると、案外甘いし脆いナミさんかわいいよね。シコリティ高め。暴力的な男の世界に入れず歯がゆそうな表情がとてもいい。 
エニエスロビー編でいちばん好きなのは、カクの戦い!四角なのに死角なし!尾田っちのギャグセンスも冴えてるのがグランドライン前半編の魅力。感動詰め合わせの総集編は、望んでないかな。笑えるワンピが好きです。