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豆大福ものがたりのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

豆大福ものがたり(2013年製作の映画)
4.5
【豆大福が出馬!汚職に賄賂にてんやわんや!】
MiniTheaterAIDのリターンであるサンクスシアター、まだ70本以上観られるのでもうそろそろ本腰入れて観ていかないといけない。というわけで、ラインナップを観ていたら、日本が誇るゆるドラマの名匠・沖田修一の短編映画がありました。これが相変わらずセンス抜群の作品だったのです。

「ショートケーキ、ショートケーキをよろしくお願いします。」

ショートケーキが拡声器に向かって語りかける。続けざまに、すあまがパトロン饅頭を召喚し、演説を繰り広げ、フランスから来たマカロンが陰日向で演説する。先日、タンタンメンがロボットに恋する狂気の映画『がんばれいわ!!ロボコン ウララ〜!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』を観たばっかりなのだが、またしても食べ物が語り始める異様な作品と邂逅した。やってることはロボコンと大差ないのに、沖田監督の手に掛ると、キメが細かい。

例えば、選挙演説の場面では、「虫歯問題についてどのようにお考えでしょうか?」とプラカードを持った人がいたり、街頭インタビューで明らかにされる無情なまでのマカロン不人気っぷりといった細かいところにまで作り込まれている。そして、豆大福選挙事務所では、豆大福の欠点である、手がべたついてしまう問題や、白い粉が散乱してしまう問題について言及される。出オチ映画でありながらも、豆饅頭の特性を事細かく洗い出すあたりに魅力を感じます。故に、狂気的映画にもかかわらず、狂気を全く感じないのだ。

そんな豆大福候補は、ジョーカーのような悪魔に「力が欲しいか」と唆され、汚職に賄賂で他の候補を買収し始めるのだ。そして、それがバレて記者会見をする。フランス人がフランス語でまくし立てるように問い詰めているのだが、汚職や賄賂は「オショク」、「ワイロ」と日本語で言っているところの外し方にジワリマス。《La Corruption》でも《Le pot-de-vin》でもないんですね。

こうして汚職で勝ち取った名声は、風の如し、滝の如しすぐ人々から飽きられてしまう。

地に墜ちた豆大福に秘書が手を差し伸べてハッピーエンドとなる。

短編ならではの勢いと自由なアイデアで作られたこの世界観は個人的に大好物でした。

豆大福が食べたくなりました。
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