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インセプションのKentaのレビュー・感想・評価

インセプション(2010年製作の映画)
4.9
クリストファー・ノーラン監督が新たに仕掛ける夢のまた夢の世界。
複雑で難解なプロットながらも、観賞後には不思議とスッキリとした気分になれる。まさにこれぞ映画だと言わんばかりの没入感。アカデミー賞を受賞しているだけあり、物語だけでなく、映像技術も手の込んでいるものになっている。

ドムが行う仕事は、標的の夢の中に潜り込み、目的のものを抜き出すというもの。主から依頼を受け、標的の夢に侵入し、頭の中にしかない厳重な情報を盗むスパイなのだった。
ある時、ドムは実業家のサイトーの夢に侵入し、目標を達成しようと試みる。だが、サイトーもそれなりに鍛えており、ドムの仕掛けに気付く。そして、作戦は失敗してしまう…。
だが、その後ドムの前に再びサイトーが現れる。そして、彼はドムに記憶を盗む行為ではなく、記憶を植え付ける行為"インセプション"という高度な難易度の高い依頼をするのだった。そして、事情を抱えるドムはそれを受け入れるのだが…。

複雑かつ難関なSF作品。
開幕からスピーディーに始まるエクストラクション。前情報のない観客はここで若干圧倒される。目の前で起こってることの理解に少々時間がかかるためだ。普段SFを観ない人であれば、最後まで整理がつかないままエンディングなんてこともあり得るだろう。それだけエクストラクションやインセプション、夢の多重構造に翻弄される作品である。しかしながら、観賞後にはスッキリとした気分になれるし、まさに映画を観たという感覚になる。2時間半の長さを感じさせないほどの没入感もある。複雑で難解なら途中で飽きてしまうとも思えるが、巧みな映像技術やアクションがあるため夢中になってしまう。

ラストの真意とは。
今作で、クリストファー・ノーラン監督はラストをあやふやにした。と言うのも、現実か夢か観客を迷わせるラストにした。このラストについては諸説あるが、個人的には現実であると思う。と言うよりそうであって欲しい。でなければ、今まで観ていたものは全てが夢オチという括り方をされかねない。マイケル・ケインのインタビューの「コマは最後に倒れるのだ」という発言と、クリストファー・ノーラン監督の「コマではなく、子供を見つめていることが重要なんだ」との発言から、夢オチではないと信じたい。僕は、モルを忘れることができなかったドムが、最終層にてそれを乗り越えたからこそ、子供に出会うことができ、この先子供を見つめていくという最高のハッピーエンドだと思う。
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