わち

FORMAのわちのレビュー・感想・評価

FORMA(2013年製作の映画)
4.5
いやー!凄かった!今年観た映画の中でも暫定1位かな、というくらいの衝撃。

冒頭からミヒャエル・ハネケのカメラワークに黒沢清の色彩が合わさったようなスタイルの映像の長回しの連続の中で、かつて同級生であった由香里と綾子の不穏なやりとりが繰り返され、じわっと憎悪が大きくなっていく様が映し出される。何の背景の説明もないまま、このままドロドロした話と意味のない長回しが延々続くのかと思わされ、正直言って前半は観ていて少々疲れる。
しかし、中盤に"ある男性"が出てきて不自然さを感じてからの怒涛の展開は、前半と同じ映像スタイルが続くにも関わらず、呼吸を忘れる程の緊張感で、全く上映時間の長さを感じさせない素晴らしいものだった。
大まなかストーリーはあくまで昼ドラでありそうな(まともに見たことないからイメージだけど)女性同士のドロドロ劇でありながら、得体の知れない憎悪を冷徹に映し出す映像と、見事な時系列の操作によって意味が無いように見えた描写が終盤にかけて一気に繋がっていく脚本とが合わさって、サスペンスとしての完成度が非常に高いものになっていた。観終わってから振り返ってみるとゾッとするような描写や会話も前半に散りばめられていて、いくつか見落としていそうなので、できればもう一度観たい!

光石研以外は知らない役者ばかりだったが、特に男性陣の演技(由香里の婚約者役は何と本作の脚本!)と配役の絶妙さが目立った。女性陣ももちろん熱演ではあるんだけど、意図したものかどうかわからないが、ほんのり感じる演技っぽさに逆にリアリティがあるのが面白い。こういう不穏な関係性の人間同士の会話って、現実でも演技だもんな。

サスペンスのためあまり具体的な内容には触れられないが、「不穏さ」「憎悪」「上手い脚本」に引っかかる人には上映期間も短そうなので早めに殴り書き文章でオススメ。頑張って前半から集中して見ることを薦めます。
わち

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