さくらえび

FORMAのさくらえびのレビュー・感想・評価

FORMA(2013年製作の映画)
4.4
高校の同級生だった綾子と由香里が、あるひ突然再開する。
綾子は化粧品会社の主任で、由香里は警備のバイト。綾子が由香里を一緒に働こうと誘い、由香里は綾子の部下になる。
二人の関係性の中で徐々に気配を強くする偽善が悪意へと変わり、人の醜さがスクリーンに映し出される。
偽善者という言葉が軽々しく使われるようになり、さらには「やらない善よりやる偽善」なんていう謎の言葉が生まれた昨今だが、この映画の登場人物の偽り方はそんな生易しくない。
悪意の自覚のない偽善者、悪意の自覚のある偽善者、他人の為と偽る偽善者。どれも薄気味悪い。

長回し、エキストラの声に掻き消され不明瞭な台詞、スクリーンに映し出される映像の外から聞こえる叫び声。それは、誰かの日常を覗き見してるみたいだった。
オープニングで綾子が段ボールに小さな穴を開けて頭から被るシーン、恐らく安部公房の『箱男』へのオマージュであるこのシーンからも、覗き覗かれる関係を意識させられた。
そう考えてみると映画館で映画を見る行為が、箱を被りスクリーンという穴から他人を覗くような行為に思えて不思議な気持ちになる。

上映後に坂本あゆみ監督が舞台挨拶で言われていた通り、分かりやすい作品ではないが、forma(本質)について豊かに想像を膨らませることのできる作品だったと思う。
あと、監督ちっちゃくて可愛かった。