義清

エリの義清のレビュー・感想・評価

エリ(2013年製作の映画)
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『闇の後の光』みたいだった。ゲストがいなかったのが残念。是非とも、何を言わんとしているのか直接きいてみたいものだった。やはり、舞台はメキシコ。砂漠地帯だったから、『バグダッドカフェ』も連想させられた。ある男が車の荷台で歩道橋に運ばれ、首吊り自殺体のように宙吊りに放置されるところから物語が始まる。シーンはすぐに切り替わり、誰だったか忘れたが、エリの家族の誰かを映し出す。エステラがベトとドライブする車内のBGMが良かった。それはそのままエンディング曲になってた。たしか♪Esclavo y amo♪とかいう。エリやその妻、エステラがある時は単独で、またある時は複数でテレビの前のソファに座るのを正面から撮ったカットが何度もあった。怠いから暇つぶしてますみたいな表情は皆に共通だった。『闇の後の光』よりはストーリー性があった。でも、誘拐や殺人、拷問など事件には事欠かないのに、なぜか語り口が単調に流れていく。別にいいんだけど。同じく今日観た『リゴルモルティス』と比べれば、その違いは一目瞭然。演技であるという印象が全くない。変に演出がされてない。もはや、脚本を書く段階で、ドラマ性など求めていないかのよう。でも、それはいいことかもしれない。これからの映画の流れになって行くかはわからないが、確実に広まってはいくのではないか。なぜなら、今を生きる我々がオペラや歌舞伎など過去の演劇には強烈な演技性を感じるのと同様、未来においては、今の当たり前の演出も過剰であると捉えられるかもしれないからだ。
物語が終わりに近づくと、冒頭の歩道橋の事件の真相がわかる。エリは妹の彼氏が起こした騒動に巻き込まれて拉致される。しかも、自殺体はエリではなく、ベトなのだ。
冒頭で見せたシーンの意味を結末でわからせるというのは、流行ってるのだろうか?『リゴルモルティス』もそうだった。冒頭で泥だらけのチンが寝転ぶシーンはゾンビとの戦闘の後に再び出てきて、観る者は彼がマンションの吹き抜けを落下してきた結果、そこに寝転んでいたのだと知る。
それにしても、わざわざ映画を作るからには、何か言わんとしていることがあるのだろうが、一体なんだろう?あれはメキシコの現状なのか?軍人が保身のために市民を拉致、拷問し、殺すこともあるという。そして、薬物に手を出したがために悲惨な最期を遂げる底辺層がけっこう存在するということか。映画のメッセージを想像するのなんて野暮だけど、少なくともあれをメキシコの現実と捉えることは、誤りではないだろう。
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