わち

トム・アット・ザ・ファームのわちのレビュー・感想・評価

3.8
高まる期待を胸に普段行かない映画館までわざわざ足を運んで初日に観てきた、グザヴィエ・ドランの4作目となるサイコサスペンス。
ジメッとした田舎の農場でのホモフォビアに因る暴力が緊張感ある映像で描かれていて、奇抜な夢想シーンや唐突な音楽が特徴的だったこれまでの作品とは打って変わって引き締まった印象。オフィシャルに書かれているのでサイコサスペンスと書いたが、特に主人公トムの恋人の兄フランシスの過去や感情は漠然と描かれているあたり、あくまでサイコサスペンスの体裁を取っているというだけで、相変わらず「同性愛」や「母親」などドランの作品に欠かせない要素が中心に据えられているように感じる。
また、暴力をあまり直接描写せず、暴力があったことをそれを示唆するシーンで見せて(魅せて)くれるあたりはすごく好みで、こういったドランのセンスには映像のタッチが変わったとしても唸らされる。
ただし、これまでの作品はセクシャルマイノリティであるドランを見て、共感できる/できないに関わらず自分に照らし合わせて見ることのできる、パーソナル視点から捉えたものだったのが、本作ではその排斥が描かれているため、社会的な視点から見て違いが浮き彫りとなる造りだったということもあり、ヘテロである自分に個人的に刺さる物語ではなかったというのは正直なところ。

フランシスのUSAのジャケットとエンドロールで流れる曲の歌詞は明らかに意図的だと思うんだけど、いまいちアメリカとカナダの関係がわからないのでピンと来なかったのが残念。他人の解説待ちです笑
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