TaroYamada

蜩ノ記のTaroYamadaのレビュー・感想・評価

蜩ノ記(2013年製作の映画)
3.5
長いなと途中感じる事は有ったが、ラストにかけてじわじわ良いなと感じ、最後は涙する程に魅入られる

御家騒動を未然に防ぎ、全ての咎を一身に背負い切腹する武士の話、直木賞受賞の原作は未読だが、地味な話を丁寧に作られている
身を以て御家に尽くす武士の本分を描きつつ、貫く話の本筋は家族愛の尊さ

俳優陣も皆好演で、特に役所広司の演じる役柄の振り幅の広さには感服する
今年前半の「渇き。」から本作迄とても同じ人間が演じているとは思えない
蟄居し、慎ましやかな生活を営み、家譜を編纂し、家族を愛し領民を大事にし、限られた時を過ごす姿が役柄がまるで憑依しているかの如く見られた

時代劇ながら殺陣シーンは殆ど無く、武士の日常が描かれてばかり、だがそれが人間関係が密になる過程がリアルに現れていて印象深い
ドラマシーンに時折挿入される四季折々の里山の情景はまだ日本にこんな風景が残っているのだと感動した