宮戸フィルム

それでも夜は明けるの宮戸フィルムのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
3.9
1853年、奴隷制度が横行するアメリカ南部、自由黒人であったソロモンが突然拉致され奴隷として生きた12年間を描く。自由を訴えることを許されない恐怖。いつか自由に戻れるという希望さえも摩耗してしまう生活に目を背けてしまう。

「大統領の執事の涙」も同じテーマだが、あちらは白人主義の世界に己を殺し身を投じる主人公を描いているため、差別描写が色濃くでている分、胸糞悪さでは勝っているが、今作においては主人公ソロモンの揺るぎない希望や生きる執着心に焦点を当てて差別国家における良心をもつ少数派の白人の苦悩面は薄く(ブラピはその少数派のキーマンだが、ブラピが演じていることもあり、ただただ美味しい役回りすぎて胡散臭さすらある笑)メッセージ性は弱めかつエンターテイメントよりな作品に思えた。

しかし「大統領の執事の涙」の主人公は白人主義に身を投じ、今作ソロモンは流れに身をまかせながらも奴隷として生きる上で、全く別の生き方をしており見比べる価値がある。 ソロモンは12年間で自由黒人として我が家に帰るが、歴史もそうであるように奴隷制度は終わらずKKKの登場など過酷を極めて行くのを知っていると図らずもいい気ではいられない。

つい先日アカデミー作品賞を受賞した今作だが、奴隷制度というアメリカ史における黒点である部分を描いた作品は過去にも多くあるが完全なる奴隷目線での生活を描いたこの作品が作品賞を得たということに対してなんだか晴れた気分にはなれないのはなんでだろうか。まあこういう日が来たことに意味があれば良いなとは思う。

あと鞭打ちの描写が腹立ちすぎてジャンゴのジェイミーフォックス無双をまた見たくなりました。