TAMURAIkuho

それでも夜は明けるのTAMURAIkuhoのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
4.2
「間」が凄く良い映画。
セミの鳴き声、汗の滴る音、無音、全てに意味があって、長い長い時の流れを味わわせてくれる。一瞬の時間なのだけれども、それがまるで一生のように感じる。

上流、中流、下流。全ての人達の置かれる立場、悩み、葛藤が入り交じっていて、交錯する思いや希望、あるいは絶望が怒涛のように押しよせてくる。

この映画で履き違えてはいけないのは、「このような恵まれない環境下でも、耐え抜く人達がいるから甘えてはいけない」なんて読み解かないこと。
違うそうじゃない。私達は置かれる立場、時代、環境が全て違う。だからと言って、苦悩や絶望の大小が違ってくるわけではない。

人によって悩みも絶望も違うけれど、何よりも心が傷つく。人間としての尊厳が失われていくことには変わりない。誰もが皆、目に見えて平等な世界の完成なんて、あと百年以上はかかるだろう。でも、心の傷は皆平等なのだ。人間だから、どんなに些細な事でも傷つく。自分より小さな傷を抱えた人を卑下してはいけない。お互いに傷があることには変わりないのだから。

その事にさえ、人類が気づいていけば。もっともっと世界は進歩するはず。
TAMURAIkuho

TAMURAIkuho