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それでも夜は明けるのTraurigerSoのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
4.5
邦題は美しい映画を想起させるようなタイトルだが、原題は"12 Years a Slave "。つまり、黒人奴隷のことである。
1840年代、まだ奴隷解放宣言もされておらず、南北戦争も勃発していなかった時代、「自由黒人」である主人公がある日白人に騙されて誘拐されて南部へ連れて行かれ、12年間奴隷として扱われた実話を元にした映画。
恥ずかしながら、私はこの映画を観るまで、「自由黒人」という身分の黒人がいたことを知らなくてショックを受けた。
奴隷として扱われることは、同じ人間として尊重されることもなく、人権を蹂躙され、モノ扱いされるということ。所有者の気分次第で、簡単に生存権さえ奪われ、街や森では到るところで首を吊られた黒人たちがぶら下がっている。

観ていて非常に苦しい映画ではあると思うが、過去にあった奴隷制度(果たして今でも完全になくなったのであろうか?)をしっかりと見つめ、現代人として「人権意識」というものについて考えるのに、この映画はいいと思う。

中高での社会科科目(或いは道徳)の授業で視聴し、人権とは何かを考えるために、レポートを提出するという課題があってもいいくらいだと思う。(おそらくされないであろうが。)

もしこの映画を中高の授業で扱うのだとすれば、現時点で私が思いつく限りでは1つ、編集しなければならないシーンがある。
それは、白人の奴隷主が、お気に入りの若い黒人女性をレイプするシーンだ。

何故かというと、課題として視聴させる際に、

1) 万が一視聴した生徒に、過去に性暴力の被害者になった人がいたとすれば、フラッシュバックを起こさせてしまう可能性があること。
2) 高校生は大人になりつつ存在であるとはいえ、未成年で思春期でもあり、大人は(子どもを一人の人間として尊重しつつも)必ず守らねばならない。

という点を考慮する必要があるからだ。
(自らの意思で中高生が性暴力シーンを観るというのであればいいと思うが、課題として観させるというのならば不適切に思う。)

書いていて更にふと思ったのだが、当時の白人による黒人の暴力は凄まじいもので、そのような暴力シーンについても、例えば虐待や、暴行事件にあったことのある人にとってはフラッシュバックを起こさせてしまう可能性があるのかもしれないと思った。

このような点を考慮すると色々と難しい点は存在するが、『ホテル・ルワンダ』『ルワンダの涙』のように、若い人たちにも是非観てもらいたい映画だと思う。
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