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そこのみにて光輝くのaのレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
3.9
光も届かぬような底から

あまりにも悲惨的な状況と北海道の掠れた空気が、より一層人物の表情を色濃くする。特に夕日を悲しげに見る千夏、ラストシーンの二人は印象に残っている。とにかく情景や雰囲気がいつも切なく、重苦しいばかりだった。

役者面に関しては満足。
主演の綾野剛。彼の見た目とは裏腹に不器用な優しさ、包容力が光っていた。
姉役に池脇千鶴。彼女のツンとした色気、凛とした立ち振舞いが見事だった。
そして今作、特に気に入ったのが、菅田将暉演じる拓児だ。育ちの悪さ、明らかにバカな感じもむしろ友達になりたい。おまけに食べ方は汚い。でもすごく美味しそうに食べるなど、感情を表に出さない達夫(綾野剛)との兄弟のようなコンビはすごいかっこいい。終盤のこの二人が抱き合うシーンは今作の最大の見所ではないだろうか。その上、拓児は純粋で無邪気だから、誰が守るために人を傷付けたり。菅田将暉の器用さにも驚いた。
この三人の関係を忘れるくらい、千夏(池脇千鶴)の父の存在が大きい。ジョニーデップ主演の「ギルバートグレイプ」の母のような存在で、家族の苦しさの根源は確実にこれ、だ。
だが、ここまで絶望感に追い込まれている家庭ってなかなかないよね、、と役者の演技で熱せられた部分を冷ましてしまうのは惜しい。

全編で感じる底知れぬ闇、完全な悪循環。負の連鎖が詰まっている二時間は覚悟が必要。
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