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アバウト・タイム 愛おしい時間についてのhilockのレビュー・感想・評価

5.0
【ネタバレ注意】

全く無で鑑賞。父から過去に立ち返る力を持っていると聞かされ、そこから人生が大きく変わる男の物語である。
いやいやそう書けば、そんなこと普通の人間にないから・・・と、瞬殺でかき消される物語だが、監督は『ノッ
ティングヒルの恋人』のリチャード・カーティス。
やり直したい、即時リセットしたい。人生の中でそんな気持ちを誰しもが持ち、それに悩み、苦しむ。ベストを探すように生きるが、それさえわからない。すべての人が体験したことのある苦い思いを映画の中で、 夢のような話に転嫁する名監督であると私は思う。しかし。この段階で『皆無・・・』と思う人は多いような気がするんだよね。ただ、監督のメッセージって、俺は次の二点に凝縮されていると思いました。一つは、二十歳を過ぎた時に、タイムトラベルができるということを父に教えてもらうということ。多感なこの時期は、人生に対して幾分の甘っちょろさもある。ちょっと大人になったこの時期だからこそ、過去に立ち返り、リセットすることも必要だよと。この時期に父が教えたのも、若者がそれを理解し、考え、その能力をうまく使えという応援である。これは若さゆえの大いなる失敗は素晴らしい。恐れずにぶつかっていけという。最近の若者の不甲斐なさを応援する監督の意図が見え隠れします。
映画はその能力を多分に使うコメディ調な前半と、与えられた能力に悩み葛藤する後半に別れる。
人生を先に生きてきた父親も、余命幾ばくない命。愛する息子にすべてを教え、能力の有効活用を提示する。 それを聞いた息子は能力を使わない日々の生活を生きてみようとする。
ティムは人生を逆戻りできた分だけ、嬉しいこと、悲しいことを再認識するが、自ら前向きに一日一日を生きれば、過去に戻らなくても新たな感動を得ることができるということに気がつく。そして、このタイムトラベルの能力がなんの意味も持たないことをティムに再認識させる。その能力をより理解しているからこその父のかけがえのない優しさと、愛情の深さに主人公は感銘するのである。
日々生きている感謝を忘れず、時節に触れれば感動できる。 まさに、無駄にせわしなく生きる現代人に警鐘するるかのような監督のメッセージでもある。
エンディング、最後の別れをする息子に、タイムトラベルした幼少の頃の姿で海岸を歩きたいといった父親。家族が増えることと、父親に永久に出会えないことで深く悩んでいる息子に、そのしがらみを忘れさせ、ピュアな幼少期の思い出に転嫁させる父親の愛おしさが痛いほど伝わりました。大人になれば家族を背負う、見えないプレッシャーを感じながら生きている訳で、その辛さって意外と男にしかわからないのかもしれません。いやいい時間いただきました。活力にします。♯家族との時間。
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