クロ

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅のクロのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

父と子のロードムービーで、とってもいい話なんだけどなんか物足りない。「いい映画」止まりかな、と個人的には思う。アレクサンダー・ペイン監督ってもっと毒の強い映画監督だと思うので、そういう部分を期待しちゃったからかな…まあこの映画は彼が脚本に関わっていないので毒っ気が足りないのも当たり前なんだけど。

個人的に思うところが2つほどあったのでこのレビューではその話を書きたいと思います。

1、田舎の描写について

僕自身田舎生まれの田舎育ちで、就職先も決して都会ではないところで生活してるんですけど、そういう育ちだからこそこの映画に出てくる「田舎のいやらしさ」がひしひしと伝わってよかったです。話す話題が車と酒と女くらいしかない。話がすぐに広がって伝わる。『ヤング≒アダルト』を観た時も思いましたけど、田舎のいやらしさはどこいっても共通なんだなって思わされます。白黒だからこそ田舎のさびれた雰囲気がよく現れていたと思いますしこの描写は個人的に胸にくるものがありました。

2、「託す」ということについて

100万ドルを受け取ろうとする理由について、ブルース・ダーンが息子に「何か残してやりたかったから」と語ります。それに対して息子のウィル・フォーテは何もいらないよと答えます。それどころか最終的には彼がトラックや空気圧縮機を父親にプレゼントし、父親に田舎を凱旋させる。最後はどこまでも続く長い一本道を二人で、一緒の車で走っていく。この展開がとてもよかった。
こういう映画にありがちな「若者に何かを託す」話ではなく、これからも未来を一緒に歩んでいくという物語。

アレクサンダー・ペインは『サイドウェイ』でも『ファミリー・ツリー』でも、過去にとらわれた人が主人公だ。でも最終的にはまた歩み始める姿で終わる。前2作は中年の危機を扱っていたが、今作ではさらに高齢の人物を扱っているのにも関わらずまた歩み始めてみせる。生きがいがなくなると目標がなくなって大変かもしれないけど、まだ歩める人生は残っている。意固地にならず一緒に取り組もうよ、とペイン監督が言ってるかのようなラストが印象的でした。
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