だいき

ファインディング・ドリーのだいきのレビュー・感想・評価

ファインディング・ドリー(2016年製作の映画)
4.0
ピクサーは海の深みの細部まで描きだす。

2003年公開映画『ファインディング・ニモ』の続編。
ピクサーはこれまで『トイ・ストーリー』、『モンスターズ・インク』、『カーズ』の続編を製作してきた。
ところが、ピクサー初の続編である『トイ・ストーリー2』では脚本製作過程で、一時は完成できない危険性も持ちあがるほどの危機的な状況に陥ったらしく、やはり「続編の罠」は油断できない。
次なる続編が本作であり、出来はさすがピクサーといったところ。
『インサイド・ヘッド』や『アーロと少年』のように奇抜な世界観設定はないし、ストーリーも平凡といえば平凡。
物語の結末も甘々なハッピーエンドだし、ミズダコのハンクとシロイルカのベイリーが反則級の能力を持っているためリアリティ溢れるサスペンスも無い。

本作の主人公ドリーは、少し前の出来事を記憶できないという特徴がしつこく描かれており、それに両親や周りの他者も戸惑い、ドリー自身も悩む。
基本的に生物学的なツッコミはナンセンスな作品で、実在する生物種をモチーフにしたキャラクターだが、実際ではありえないアニメらしいオーバーな行動や演出がてんこ盛り。
例えば、ジンベエザメのデスティニーは目が悪いことが悩みだが、本来サメは視力が低いという事実がある。
腕が1本欠けてしまったことをトラウマにしているミズダコのハンクについても、実際のタコの腕は本体を危険から守るためにちぎれやすく再生するようになっている。
そして、記憶力に欠点があるとされる主人公のドリーだか、魚の記憶力は数秒から十数日しか持たず、明らかに哺乳類や鳥類よりは低い。

つまり、彼らが他者とは違う欠点だと思っているそれは、生物種のただの普遍的な特性に過ぎない。
その特性の異常性を強調することで、生物学的知見のない観客にまるでキャラクターたちが欠点を抱えているように錯覚させている。
劇中でアシカの二人組キャラが岩場から一人のアシカを執拗に追い払いますが、本作を「障がい者」を扱った作品だと思ってしまうと、このシーンもまるで障がい者差別を表現しているように見えてしまう。
だが、これはアシカの雄が普通に行う縄張り行動にすぎない。
『カーズ3』、『トイ・ストーリー4』、『Mr.インクレディブル 2』とピクサーは今後も続編ラッシュが続くようだが、期待が高まる。
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