MaeshiroTakashi

寄生獣のMaeshiroTakashiのレビュー・感想・評価

寄生獣(2014年製作の映画)
3.0
実写版の寄生獣を見てきました。
原作を知らない人は大いに楽しめると思います。
話の組み替えの構成力は監督が何本も長編作品の映像化を行って来ただけあって流石だと思いました。
映画の出来としては良いと思いましたし、染谷君の演技にはウルっときました、いい役者だと思います、そういう点では万人にはススめられます。

が、個人的に許せない改変があったので非常に残念でした。
いかネタバレあり



1、ミギーが笑う
原作の主題は倫理観の完全に異なる異生物と間で行われる、肉体と言語を共有した対話であり、すれ違いであり、折り合いであり、それらの距離で「人間」を問う事にある。
アニメでのミギー役である平野さんのその主題への理解度は非常に高いので自分はアニメ版を評価している。実写版に関しては阿部さんの演技がそれを表現出来ていないのだ。
ミギーが笑った瞬間は愕然とした。
彼の演技はシニカルを装った人情家的ではあるので、仮に彼がジョーだったら嵌ったと思うのだ。残念である。

⒉母性による奇跡
母親との決着が本当に最悪。肉体に残った母の意識がシンイチを救うってしまう、母性による奇跡である。単品としてみれば安っぽいが無しではない。でも連作である事を考えると、ココで奇跡を起こされてはシンイチのトラウマがある程度その場で昇華されてしまうではないか。原作では母の形をした母の仇を、結局自分で討てなかった、それにより虚空に放り出されたトラウマに苛まれるシンイチが、自我を保つ為に人間性の柔い部分に蓋をする。この状況にシンイチ自身の超人化を並走させる事で、精神の変貌の根元を巧妙に隠す見事な展開なのに、あれでは台無しであある。
宇田、ジョー組をカットして母自身にその役をやらせるとしてももっと別の方法があったはずなのだ。
せっかくシングルマザーという改変をしたのだから、長年の無理で火傷以外にも内臓や肉体の疾患を抱えている設定にすれば、寄生の負荷とシンイチの責めで限界を迎えて最後はひとりでに崩れていく展開にも出来たはずだ。この方が多面的にシンイチのトラウマを深く出来るし宿主がなければ脆弱なパラサイトの設定も生きる。更に言えば肉体的にどういう風な状態で母がシンイチを育ててきたかをミギーの口から「人間の中で一番不可解なのは自己犠牲だ」とドライに解説させれば、奇跡と後悔とトラウマ、そして異生物との倫理観のズレが重層的になったはずである。
というかこれだったら俺が100パー泣いてるわ。
これで撮り直してよ。

文句タラタラ書いたけど完結編も見に来ますよ。別れのシーンは泣くだろうしね。繰り返しですがファン以外の万人にはオススメ出来るクオリティではあります。
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