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キングス・オブ・サマーのKanjiのレビュー・感想・評価

キングス・オブ・サマー(2013年製作の映画)
5.0
思春期に少年から大人に変わる、と言うほど大きな変化がある訳ではないけれど、ほんの少し成長する一夏を描いた青春映画。

同じ学校に通う三人の男子たちが、親の保護(監視)から逃げ出し、自分たちの王国を築き上げる。男子なら誰もが、といえば言い過ぎかもしれないけれど、多くの元少年が一度は夢見て、あるいは実際に実行したことのあるであろう秘密基地作りと、そこでの何物にも縛られることのない自由な生活を本気を出して実行する物語。

子ども達はもちろんのこと大人達も含めて出てくる登場人物のキャラクターが非常に良い。
好きな女の子に思いを告げられない主人公・ジョーや、支配的な父親。純粋に良いヤツでイケメンな主人公の親友・パトリックや、その過保護な両親など、一見ステレオタイプにも見えかねない登場人物達だが、とんでもなく良いバランスで描かれている。
そして主人公達の友達?で一番よくわからない少年・ビアッジョ。彼が一番素晴らしい個性の持ち主で、何を考えているのかわからないけど、一挙手一投足が笑える。
どんなところがかを聞かれると文章に出来ないので、まずは予告編でも見てもらったらなんとなく伝わるかと思う。

自分が子どもの頃にこんな青春を過ごしたかったなと強く思う。緑の溢れる森の中で自分たちだけの秘密基地を作り、好きなものを食べ、好きな時に川で泳ぎ、とっておきの場所もある。そんな自由な空間で仲の良い友達と過ごす。まさにネヴァーランドのような空間は、今となっては手に入りようもない青春時代の美化された思い出のようなもの。
それでも、そんなに仲の良い友達と自由に暮らしていても、綻びは発生するし諍いも起きる。その諍いの原因もまた思春期特有の鼻血が出そうなほど恥ずかしいものだったりするから、たとえ自分に全く同じ経験がなくとも、脳内で自分の経験を捏造して既視感と親近感を覚えてしまう。

『スタンド・バイ・ミー』とは少し違った青春映画だけれど、『STAND BY ME ドラえもん』の「すべての、子ども経験者のみなさんへ」というキャッチコピーがしっくりくる作品。
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