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イコライザーのRのネタバレレビュー・内容・結末

イコライザー(2014年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

2014年のアメリカの作品。

監督は「トレーニング・デイ」のアントワン・フークア。

あらすじ

マサチューセッツ州ボストン。ホームセンターで働きながら平穏な生活を送るロバート・マッコール(「マクベス」)は誰からも慕われる好人物で深夜は行きつけのダイナーでの読書が日課となっていた。その店には同じく常連でテリーと名乗る娼婦のアリーナ(クロエ・グレース・モレッツ「レモーナ」)がおり、わずかながらも言葉を交わしながら、マッコールも気にかけていた。そんなある日、アリーナが自分に暴力を振るった客に反撃して傷つけてしまい、元締めのロシアン・マフィアに見せしめに病院送りにされてしまったことから、マッコールの隠された本性が明らかになる!!

今週、遂に最終作?となる「THE FINAL」が公開!ということで、再履修としてまだレビューをあげてなかった本作をチョイス。

今でこそ、ただいま絶賛公開中の「ジョン・ウィック」シリーズをはじめ「96時間」シリーズや「ザ ・コンサルタント」や「Mr.ノーバディ」など映画ファンでなくとも広く伝播された「なめてた相手が殺人マシーンでした映画(©️ギンティ小林)」だが、思えば、今は疎遠となってしまったT君と夜映画で2人で観に行った本作こそ俺自身このジャンルにハマったきっかけとなった作品。

なんとなーく面白そうだなーって感じで観に行って、いやいや…危ないよーからのえぇ〜!?激強!!!!と今まで感じたことのない爽快感を感じて、溜飲下がりまくり、未だに記憶に残ってる思い入れのある作品だ。

お話はあらすじの通り、「なめてた〜」映画というフレーズが有名になる前はアメリカ版「必殺仕事人」なんて呼ばれていたが、元々は「ザ ・シークレット・ハンター」という1984年から1989年までアメリカで放映されていたドラマシリーズの劇場版。ただそちらとは雰囲気もキャラクターも全然違うということらしい。

で、やはり本作、主人公のマッコールさんのキャラクターがとにかく良い!!ジョン・ウィックや「ザ ・コンサルタント」の主人公ウルフ、「96時間」のブライアンと比べて見ても1番の好人物というか、とにかく「良い人」!

普段はホームセンターで働いているんだけど、すれ違う人すれ違う人みんなマッコールに気さくに挨拶し、それに朗らかに言葉を返すマッコールが普段からきちんと関係性を築いていることを感じさせるし、その中でもどうやら警備員の試験を受けるために頑張ってる肥満気味の同僚ラルフィ(ジョニー・スコアーティス)に対してはダイエットを兼ねて、トレーニングに付き合ってもらったり、そのために厳しさの中にも励ましや暖かみのある言葉をかけながら見守っていて、まるで父親のような面も見られる。

また、ちょっとしたシーンなんだけど、ラルフィよりも更に若いバイトなのかな?兄ちゃん2人組との「Yo!おっさんの前職当ててやるぜ!」の絡みだったり、本作の物語が本格的に動き出すきっかけとなるヒロイン、クロエ演じる娼婦アリーナとの行きつけのダイナーでのそれまでお互い決して深くは立ち入らない関係性ながらも、その関係性を超えてまで勇気を出して歩み寄ろうとしてきたアリーナに対してはちゃんと1人の大人として受け入れて話を聞き、精神的なサポートに与する感じも「最近の若いものは…」なステレオタイプの大人ではなく、ちゃんと若者に対しても目が向けられている人であることを感じさせて、やっぱり良い人というか「人としての正しさ」がある人物として描かれていることをヒシヒシと感じさせる。

ただ、その中でも時折、仕事の休憩時間に揺れるカーテンをただただ眺めていたり、アリーナからもその目に途方に暮れた感情が現れていることを指摘されるなど、どうやら昔、奥さんが亡くなったことに対する深い喪失を胸に抱えていることも描かれている。

そんで、やっぱ演じるデンゼルがめちゃくちゃ良いよな!優しげでそしてどこか達観しているようにも見える寂しさから滲み出る「渋み」。髪型も全剃りしてのスキンヘッドがマッコールというキャラクター性にも合っていて、やはり演じるならこの人感というか、とにかくハマってる。近年、同じ黒人俳優であるウィル・スミスのアカデミー授賞式での「あのトラブル」で即座に彼に言葉をかけたり、若手俳優に対してもアドバイスを積極的にかけるなど、その兄貴分というか「面倒見の良さ」もマッコールに重なる。

そんな感じで序盤はロバート・マッコールその人の「人間性」だけを丁寧にそれでいてちゃんと観る側に感情移入させることに注視していんのがまたこの手の映画にしては異質でもあるんだけど、そこを飽きさせずにマッコールという人物像に圧倒的な好感を持たせるのが流石「トレーニング・デイ」からの久々のデンゼルとのタッグとなる監督アントワン・フークア。

で、中盤からは遂に「殺人マシーン」としての本性を露わにするターンに入るんだけど、やはり初っ端のロシアン・マフィアのアジトに単身殴り込みをかけるシーンが印象的。

アリーナが客に乱暴されて、反撃したことで、元締めのマフィアにボコボコにされちゃうんだけど、病院での痛ましい姿を目にして、遂に長年封じていた「もう一つの側面」が蘇り、静かな怒りをたぎらせながら、アジトに向かうマッコールなんだけど、ファーストコンタクトはわりかしそれでも穏便に金で解決しようとする。ただ、そこからマフィアのボスが「金出しても、1か月だな!マスかいて帰りやがれ!」と一昨日きな!状態で馬鹿にされ、足蹴にされたことで、遂に戦闘状態になっていくんだけど、一旦扉を開けて帰ろうとするかと思いきや、何を思ったかその扉をバタンバタンと何度も開け閉めする…こえーー!!それまでもダイナーで家から持参した食器を規則正しく並べたりとどこか強迫神経症的な面が見られたけど、このシーンはそれまでの「いい人」で隠されていたマッコールの「異常性」が露わになることもあって、やっぱ戦闘に至るまでの「助走」というか「戦いへのゴング」的な感じで強烈に印象に残る。

で、そっから未だに観るたびに欲しくなる北欧ブランド「SUUNTO」のCORE ALL BLACKという愛用の時計で「(人数数えて)よし、16秒だな。1秒、2秒…」と数を数えながらその場の道具を使って戦うスタイルで見るも無惨に即座にマフィアたちを1人残らず殺していき、「19秒か…」と鮮やかにさえ見えたその瞬殺具合にどこか不満さえ感じているような圧倒的殺人マシーン感、マジぱねぇ笑。そして、撃たれた喉から溢れ出る出血で今にも薄れゆく意識のボスに向かってか、それとも亡き奥さんとの誓いを破ったことに対してかはわからないけど「すまない…」と一言、そしてその夜あれだけ不眠症気味だったマッコールがぐっすり床につくと…いやサイコでサイコー笑!!

そんな感じで、まずはこのファーストインプレッションが未だに鮮烈に記憶に残るシーンなんだけど、前半の日常パートの「溜め」がめちゃくちゃ効いているので、とにかく観ていて溜飲が下がる、大満足のシーンとなっている。

で、一旦殺人マシーンとして蘇ると早いもので、その後もラルフィの母親が経営している店が悪徳刑事たちによってボヤ騒ぎを起こされ、ラルフィが警備員試験を辞退しなくてはならなくなってしまったと分かるとその刑事たちをボコして「二度と関わるな」と脅迫したり(その後、無事に警備員になれたラルフィ良かったね!)、ホームセンターに押し入り強盗したチンピラがお金と共に同僚のおばさんがしてた亡きお母さんの肩身の指輪を持ち去ってしまうと店のハンマーを持ち出して翌日にはその指輪を取り戻して、血のついたハンマーをしれっともとに戻す「省略」パートなどいちいち溜飲が下がるんだけど、ロシアン・マフィアの一件で大ボスプーシキンの元からトラブル・シューターとして送り込まれるのが元スペツナズ出身の凄腕テディ(マートン・ソーカス「シュヴァリエ」)。

こいつがまた強烈で、見た目はマフィアらしくないスーツをビシッときめた紳士的な感じのジェントルなんだけど、一旦牙を剥くと灰皿で敵の頭をかち割ってオーバーキルするまでボコボコにする荒々しさを見せるマジモンの鬼畜野郎。中でもボス、プーシキンとの通話のシーンで上裸になるんだけどスーツ姿で隠された裸体には、ロシアン・マフィアならではの彫り込まれたタトゥーがびっしり。そのまま通話を終えた後、ゆっくりとソファに寝そべるシーンが絶妙にエキセントリックでインパクト大!

後半からはそのテディ率いるマフィアとの戦いになっていくんだけど、ぶっちゃけ「殺人マシーン」マッコールさんにとっては相手不足というか、全然ピンチにならないのが面白い。

ファーストインプレッションこそ、身元が明らかにならないように立ち振る舞っていたマッコールの身元を即座に特定し、アリーナの同僚だった娼婦役のヘイリー・ベネット(「シラノ」)を自身が絞殺した死体の写真を見せることで一泡吹かせるんだけど、そこから「本気モード」になったマッコールさんが資金洗浄の工場に乗り込んでそこにいたギャング共々警察に通報して一斉検挙したり、マフィアとツーカーの汚職警官、まだほっそりしているデヴィッド・ハーパー(「グランツーリスモ」)演じるマスターズの持っていたUSBから警察関係者、官僚に至るまでの汚職関係のデータを警察にリークしたり、挙句の果てには輸送に使っていたライフラインの船を単身で爆発しちゃったりする!もう船爆破のシーンなんか無表情のマッコールさんが仕事を終えてスタスタ帰るバックで盛大に爆発が起こっていて、なんか安っぽくも「やりすぎ!」な感じがあって爆笑してしまった!!

途中、テディ以外になんかグラサンかけた凄腕感があるマフィアが「お前らじゃ、相手にならねぇ。俺が殺すぜ」的な感じで意気揚々と登場したと思ったら、次の瞬間には血だらけのグラサンだけ持ってやってきたマッコールさんが「あいつは戻ってこない」とか言っちゃったりして、出オチギャグというか「シリアスな笑い」シーンにもなっていてもうなんかここまで来るとコメディかと思えてくる不思議。

そんな感じで全然相手にならないばかりか、逆に「怒らせてはいけない相手を怒らせてしまった」テディがマッコールの「弱み」である、同僚の面々を人質にとって繰り広げられる戦いの舞台が、来ました!!アクションの聖地「ホームセンター」。

三池崇史の監督作「初恋」でも大森南朋演じる悪徳刑事が「なんでも揃ってるな!」と言われるほど、まさにマッコールさんうってつけのシチュエーションではあるんだけど、そこでは床にばら撒いた砂利に気を取られているマフィアを鉄線でくくりつけて吊るしたり、電動ドライバーで後頭部からキュイーンてやったり、お手製の槍で横からザクっとやったり1人のまた1人とまるで殺人鬼のように、その殺しのテクもいちいちグロくてサイコーなんだけど、やはりここでの白眉はテディとの一戦。人質となった同僚たちを逃すことに成功するもマッコールのピンチに駆けつけたラルフィのアシストに気付いて今にも殺されそうになるところを背後からやってきたマッコールさん!!

スプリクラーで天井から降り注ぐ水がまるで雨のように感じさせる「決戦」の舞台立てとそのバックでかかるテーマソングが「緊張感」を高めていく中、銃ではなくネイルガンで1発、また1発テディの体にネイルを打ち込みながら近づいていく。そして「お前は何者だぁーー!!」のテディの言葉にも応答することなく、最後の一発を食らわせ、その場を立ち去るマッコールさん…かっこよすぎ。

スプリクラーの水がマッコールさんの全身に降り注ぐことで感情は出さずともまるで彼が泣いているようにも感じさせ、間違いなく今作というかシリーズ屈指の名シーンでもある最高のシーンだった。

最後は中盤からずっと不在だったアリーナも娼婦の足を洗い、夢だった歌手への道に邁進する元気な姿を見せてくれ、マッコールさんが彼女のために何をしたのかを具体的にわかってはいないだろうに、最後に「ありがとう」とキスするラストも最高に良い終幕だった。

亡き妻の残した「読むべき100冊の本」というのが劇中何度も出てくるんだけど、「騎士のいない世界」で「騎士」を目指したドン・キホーテのように喪失の中でも「正義」を失わなかったマッコールが最後、アリーナのようなまだどこかにいる助けを求める人々のために広告を出して、あのダイナーでその相談に乗ることを決めたラストは「老人と海」の老人のように本当の「生きがい」を見つけたんだね。

「世界を変えろ」、アリーナに向けたこの言葉はマッコール自身に向けられた言葉だったのかもしれない。

改めて観ると、今作が大好きになった理由は「なめてた〜映画」の大傑作であるということ以上に、「アクション映画」というジャンルを超えて、主人公マッコールが「困っている人を全力で助ける」という、俺が憧れる、まごうことなき「ヒーロー」の映画でもあったからなのかもしれない。

とにかく、大好きな本作、遂に「FINAL」となる(予定)の本作、早く観たいような、まだ終わって欲しくないようなそんな心持ちで待ちたいと思います!!
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