TaroYamada

ルパン三世のTaroYamadaのレビュー・感想・評価

ルパン三世(2014年製作の映画)
2.5
モンキー・パンチ原作というよりは、連綿と続くアニメ版を原作にしたと言うべき作品
しかしながら、そのアニメ版を意識し過ぎた作り、偉大なシリーズだけに影響を受けるのは仕方ない事としても、それは制作段階で分かっていた事、結局その呪縛を逃れられず、混迷した作品になってしまった感は否めない

本作は”ルパン三世”シリーズの代名詞とも言える大野雄二作曲のメインテーマ曲を含む既存曲の使用許諾が出なかった
よって劇中で使われる劇伴楽曲によって世界観が変わって来るかな?と思っていたら、殆どのシーンに於いて、アニメ版同様に劇伴がずっと流れ続けている、アニメの様に小さいボリュームでかすかに
それが大野雄二”風”のメロディのなんちゃって大野雄二楽曲が劇伴なのだ、この演出はどうなのだろう?原作に拘泥するばかりに、制作者自ら足枷を付けている様にしか見えない、何故普通に作る事を放棄したのか
おまけに、有名なメインテーマ曲に変わる布袋寅泰作曲のテーマ曲まで同様に大野雄二テイストになってるとは…

俳優陣は韓国、タイなど、外国人キャストを含む多国籍編成となっており、劇中の使用言語を日本語に統一させる為、全編吹き替えという荒技を使っている
これは新たな方策として今後海外マーケットを意識した場合はそれぞれの言語を使用したり、英語に統一して字幕を付けたりと可能性が見えてくるやり方と言える
それならルパン三世一味も別に日本人に拘るキャスティングをしなくても良かったんじゃないか?特に峰不二子役にはもう少し国際性を感じる、外国人っぼい女優を配役しても良かったのでは無いかと思う

映像はちゃんと撮れてるし、見る側の生理を損なう様なカットも無く、見た目は普通に映画になっている、これは監督の手腕なのだろう、少なくとも「るろうに剣心」よりは遥かに見やすく感じる

しかしながら、ストーリーはバラバラ、シークエンス毎にストーリーはあるが、一本筋が通っている様には感じない
フラッシュアイデアを脚本に組み立てていった感じだ
原案で監督と共にプロデューサーの山本又一郎氏のクレジットが有る、そして別名義で脚本も共同執筆している
この方、萩原健一を追ったドキュメントTVで「TAJOMARU」の制作現場に登場されていたが、萩原健一は真面目に足利義満のキャラクターや時代背景を追求しようとしてるのに、そんなのはどうでも良いんだと言い放つ豪放磊落ぶり
あのトンデモ映画を構想制作しただけにきっと今回も思いつきの連続だろうと想像せずにはいられない
雇われプロデューサーでは無く制作委員会方式とは言え、ハリウッド型のプロデューサーとして、また主演小栗旬、助演綾野剛の所属事務所代表として好きにして良い立場であるが、出来た作品がこれでは…非常に残念な結果である

原作を超えようとオリジナルストーリーで挑んだものの、原作を意識するばかりに演出面で原作をなぞる描き方をした結果、よく分からない作品になってしまった
なぜ換骨奪胎して、枠だけ使いつつも純然たるアクション映画を作れなかったのか