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新アリゲーター 新種襲来のAZのネタバレレビュー・内容・結末

新アリゲーター 新種襲来(2013年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

新種のワニが登場してガブガブしていくワニワニパニック映画。

何と今作、粗製濫造されるワニ映画においてかなりストーリーをきっちりさせていこうとしているタイプ。
おまけに、後半では予想外のネタも効果的に使ってくる。実はかなりよく出来た作品である。

舞台となるのはルイジアナ州のワニが多い湿地帯。ジメッとした南部っぽい感じ。
この土地ではドウセット家とロビショー家が100年も諍いを続けており、そんなにも仲悪いのにそこそこ近くに住み続けていた。どちらもめんどくさい一族である。
そこに4年振りに帰ってくるエイブリーは、ドウセット家の人間でありながらロビショー家の若者デイサンと恋仲にある。
現代ではなかなか出来ない「ロミオとジュリエット」仕立てのラブロマンスがやんわりと展開されるのである。
なおこのドウセットとロビショー、お互いに銃突きつけあうような関係ではあるがワニを前にすると助け合うシーンもある。
家名を記号的に憎んでいるだけで本当に憎み合っているわけではないのだ。たぶん。意味もなく長男が相手方を闇討ちして殺す場面もあったが、たぶん本当に憎み合っているわけではないのだ。

さて、そしてワニである。
新アリゲーターと言うだけあって本作のワニはなかなか珍しい特徴を備えている。
体長はだいたい4mほどなので標準的な大きめのアリゲーターといったところ。
まず見た目の特徴は真っ赤な首だ。原題でもレッドネックゲイターズとなっている。
どことなく誇らしげなカラーで、微妙にムカツく顔面の造形と相まって小憎らしい。
さらに特徴的なのは武器だ。噛みつくのは当然として、尻尾に生えた凶悪なトゲトゲを遠慮なく発射して獲物を仕留めるのである。
尻尾を垂直に持ち上げれば発射の合図。
どういう身体の構造なのか、恐ろしい速度で放たれるトゲは正確無比に相手を一撃で殺す回避不能の魔弾と化す。

これだけでもそれなりの物珍しいワニではあるが、このレッドネックゲイターはさらにとんでもない特性を備えている。
何と、このワニに噛まれた人間もまたワニとなってしまうのだ!ゾンビーバーかよ。
ゾンビ映画よろしくワニ化していく人間は、ワニ人間どころか完全にワニとなってしまう。
レッドネック(農村部の貧しい白人)がレッドネックのワニとなるのだ。
その根本的な原因はロビショー家が沼に垂れ流しにしていた真っ青な密造酒。あんまり飲みたくないビジュアルだが、そんなものに手を出さざるをえないような貧しい人間がワニとなってしまう悲しみである。
ちなみに、この酒で変異したワニを食べてもワニ化してしまうらしい。何でそんなことに。
両家の対立、噛まれても噛んでも変異、と言うのは「サバイバル・オブ・ザ・デッド」も思わせる。

エイブリーの家族であるドウセット家の面々が全員もれなくワニ化してしまう後半は、より家族間のドラマを濃厚に打ち出してくるような気になる。
長年の両家の対決もいがみ合っていたドウセット家の父親がワニ化したことで、やむなく銃を向けるロビショー家の父親との対峙でクライマックスを迎える。
「お前とは親友になれた気がするよ」と最後の最後に漏らすロビショーパパのセリフは泣かせるが、騒動の原因が完全にコイツなので終盤かなり物分かりのいいオヤジ面してるのも微妙な映え方だ。

さらに予想外なのは恋人のデイサンまで後半早々にワニ化してしまうことである。
中間のワニ人間形態もなかなかセクシーで良いものだが、完全にワニ化しても強く人間性を残すワニデイサンは愛するエイブリーを守るために他のレッドネックゲイターに立ち向かう。
ワニデイサンはワニ化する際にも着ていた服を破かずに丁寧に脇に脱ぎ捨てておく、変なきちんとさもある。
その中途半端な野生が災いしているのか微妙に弱いので、いきなり他のワニと相討ちになって死んでしまう。
だが無駄にタフなワニデイサンは特に活躍はしないが息を吹き返し、最後の最後でエイブリーと結ばれるのだ。
ドウセットもロビショーも壊滅状態なので、あらゆる障害は粉砕されてめでたくハッピーエンドを迎えるのである。

ラスト、デイサンとの間に出来ていた赤子を抱くエイブリーに寄り添うワニデイサンの図は、程良くおぞましい美しき愛を感じられなくもないように思える良カットである。
いつ子供作った!?と戸惑ったが、そう言えば家族を殺された悲しみの中で何かセックスしていた。あれがさり気なくラストへの伏線になっていたのだろう。

ストレートに言えば質は大したモノではないのだが、低品質の続くワニ映画においては意欲的な要素が多分に見える良作である。
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