うめ

チョコレートドーナツのうめのレビュー・感想・評価

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
3.4
 1970年代、実際にゲイのカップルが母親に育児放棄された子どもと家族のように過ごしていた話から着想を得て書かれた脚本に心打たれたトラヴィス・ファイン監督が制作した本作。今よりももっとひどかったであろう偏見の目に負けずに、一人のダウン症の子どもマルコと家族になろうとしたゲイのカップル、ルディとポールのストーリー。

 差別や障害という題材は非常に慎重に扱わねばならぬものだ。(それは腫れ物に触るような態度を取らねばならぬという意味ではない。)今回映画全体のメッセージを感じることはできたが、丁寧な描き方、もっと言うと賢い描き方ができていなかったような気がする。具体的に言うと、何故ルディとポールがあれほどまでにマルコと暮らしたいと思ったのか、何故ルディはマルコを引き取りたいと思ったのかなど、ストーリーの核となる、3人が「家族」になる過程やそれぞれの背景が明確に描かれていなかったことが最大の欠点だ。その辺りが描かれていないと「ゲイ」や「ダウン症」といった一般的な、抽象的なシンボルに、それぞれのキャラクターが落ち込んでしまう。

 また善vs悪のような明確な対立関係を作ってしまうのもどうかと思う。例えば、ルディやポールに味方となる友達や話を聞いてくれる人がいて、その人が第三者の立場として助言をしてくれるシーンがあったら…。とにかく多面的な描き方をして欲しかった。

 「キャバレー」でトニー賞を獲得したアラン・カミングの歌唱シーンは見事だと思う。ただこういうテーマの作品を観るのならば、別の作品をお薦めしたい。私はどうしてもこの作品は好きになれないだろうなぁ…。