トッシマー

チョコレートドーナツのトッシマーのレビュー・感想・評価

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
4.2
 社会や周囲の理不尽に心疲れていく、いわば性的マイノリティ版ジョーカー。

 体は男だけど心は女の主人公は、場末のゲイバーで踊り子みたいなことをやってる。ある日、アパートの隣の部屋の薬中の女が大音量で音楽を流していることを注意しに行くと、その女の、ダウン症の息子に出会い、息子として引き取ろうとする話。

 主人公はとにかくエネルギッシュ。ゲイであることを隠そうとしない。自分を自分として出していく姿勢には憧れる。「子供は好きで苦しい境遇にいるわけではない」と、親が逮捕されて独り身になったダウン症の少年を引き取ろうとする熱い女。一方で、主人公のパートナーは超エリート弁護士の男。「世の中を変えよう!」と切磋琢磨して高い位置に上り詰めたが、自分の立場に縛られて、自分を出せずにいて、主人公とは対照的。
 
 とにかく、普通の夫婦がやろうとすることが、ゲイのカップルには許さなれない。少年を養子としてひきとるときも、カップルだという関係を隠して、「いとこ同士です」という。立場を隠したほうが、養子にする上では有利だよな、と思ってしまったが、本来の自分を出すと不利になる社会の差別性が裏にある。
 
 ゲイのカップルとばれると、子供と引きはがされ、親としてふさわしいか尋問にかけられる。「子供の前でセックスしてないか」「子供をゲイバーにつれていったか」「親がゲイであることが子供に悪い影響を与えると考えなかったのか」。元の親は薬中で、一日中大音量で音楽を流し、セックスしている間に少年を廊下に放置する。一方、主人公カップルは、愛をもってご飯を食べさせ、お話をし、送り迎えをしている。しかし、ただ「ゲイ」だという理由のみで子供から引き離される。

 本当の親の元にいるから幸せなのか?ゲイ、人と違うからダメなのか?と、陥ってしまいがちな偏見に対する、強い反感がこもった一作。
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