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まちや紳士録のodyssのレビュー・感想・評価

まちや紳士録(2013年製作の映画)
3.0
【地方再生のために】

福岡県八女(やめ)市に古い街並が残っている。そこの通りに面した建物、すなわち町家を保存し、地方都市の人口減少・中心街衰退の流れに抗して住人を確保していこうとする市民たちがいる。この様子を映し出したドキュメンタリーが本作。

町家保存や修復の中心になって活動している人物、逆にそうした運動に疑問を呈する人へのインタビューが、どちらに肩入れするというのでもなく並べられている。町家修復の工程もていねいに撮影されている。

町家は、今どきのパネル工法とは違い、ちゃんと土などで壁を作り漆喰を塗る。ああ、昔の家ってこういう風に作ってたっけな、と懐かしくなる。でも、土壁は時間がたつと縮んでくるから柱と壁の間にすきまができやすくて、だから昔の家はすきま風が結構吹き込んで冬なんか寒かったんだよなあ。やっぱり今どきのパネル工法(2×4工法なども含む)のほうがいいんじゃないか、って気もするなあ。

この町家に移ってくる人々の様子も出てくる。九州出身でいったんは首都圏に出たものの、こちらに戻ってきた若夫婦。ただ、こういう人々の紹介がこの映画にはもう少し欲しい気がする。私も地方都市在住だから、他人事じゃないので。

八女市には郡役所の大きな建物が残っており、なんとか再利用しようと模索が続いていることもこの映画で紹介されている。郡に役所があったのだとは知らなかった。「郡」って地理的な区分で、行政上の実態はないものだとばかり思っていたので。調べてみたら、昭和初期に実質的な(つまり行政上の区分である)郡制度は廃止されているのだ。郡役所の建物は、だから相当に古くて、多分大正期に作られたシロモノだということになる。うーん・・・。

まあ何にしても、地方再生のために地道に努力している人たち、そしてその様子を映画にした人たちに、拍手を送りましょう!
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