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黒い下着の女 雷魚のsyuriのレビュー・感想・評価

黒い下着の女 雷魚(1997年製作の映画)
3.8
今や邦画界を代表する瀬々監督の出世作予算は600万円で、6日間の撮影 形態は新東宝のピンクだが同年のピンク大賞から本作は外されたため、厳密な意味ではピンク映画とは言えない。この作品は、1987年に起こった「札幌テレクラ殺人事件」(紀子のエピソード)と1993年に起こった「日野OL不倫放火事件」(竹原のエピソード)を元にドラマが構築され、シナハン段階で偶然遭遇したテレクラ狂いの女や利根川で見た雷魚が退廃したこの映画の世界観の象徴として描かれている

この作品はまぎれもなくこの時期の瀬々さんを代表する一本である。キーを抜いた映像的な力強さ、ロケーションの見事さ、キャスティングの絶妙さと三拍子揃っている。本作の根底にある人間の原罪的な重苦しさ・狡猾さ・身勝手さを表現し 情念というか、執念と言うか… この時代の特殊なピンク映画からしか出てこない表現性や世界観は今見ても独特。人物の状況描写が淡白で、90年代邦画の一つの傾向である「淡々とした」映画だけど、それは情念が行き場を失い迷い込んだ末の末路を強烈に表現している。今で観るキムギドクの走りのような作風
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