青眼の白龍

ジュラシック・ワールドの青眼の白龍のレビュー・感想・評価

ジュラシック・ワールド(2015年製作の映画)
4.1
 説明不要の『ジュラシック』シリーズ4作目。22年の時を経てついに開園したテーマパークで、新種の恐竜が2万人の観光客達に牙を剥く……CG技術の劇的向上も見所だが、脚本が非常に秀逸。単なるリブートに留まらず、過去作を踏まえた上で新たなスリルと感動を提示することに成功している。「家族の絆」「生命倫理」などシリーズで連綿と受け継がれてきたテーマも、時代の推移に合わせて形を変えながら描かれる。
 舞台となるのはファンお馴染みのイスラ・ヌブラルであり、1作目と直接繋がる場面も多い為、できれば本作を観る前に復習しておきたい。本作において特筆すべき点は、やはりクライマックスの戦闘シーンだろう。過去シリーズを通して無機質な凶敵として描かれていたラプトルと人間の絆に迫ったアプローチは、新たな脅威に対する共闘という形で展開する。信頼関係が野生の本能を上回る瞬間、これまで人間の矮小さを浮き彫りにする為の道具にすぎなかった“人工の”恐竜達が、新種(完全な人間の創造物)の介入によって、初めて意志を持った自然の一部として認められたように思える。
 スピルバーグは『ジュラシック・パーク3』以降、製作総指揮に回っている。本作を手がけたのはコリン・トレボロウ。2012年に『彼女はパートタイムトラベラー』で注目を浴び、本作が長編二作目となる新進気鋭の映画監督である。脚本を担当したリック・ジャッファ&アマンダ・シルヴァー夫妻も、近年『猿の惑星』のリブートで高く評価されている。音楽は『カールじいさんの空飛ぶ家』でアカデミー賞を獲得したマイケル・ジアッチーノと、スタッフは実力派揃いだ。主演は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で注目を浴びたクリス・プラット。第二の主人公とも言えるヒロイン役は、トリアー監督の『マンダレイ』で知られるブライス・ダラス・ハワード。過去作からは、1作目でグラント達に遺伝子操作の説明をしていた研究員ヘンリー・ウー役のB・D・ウォンが(そこそこ重要な役で)続投している。また本作の敵対者となるヴィック・ホスキンスを演じるのは『フルメタル・ジャケット』の微笑みデブとして映画ファンに親しまれるヴィンセント・ドノフリオである。
 現在『ジュラシック・ワールド』は新三部作の一作目として位置付けられていることが明らかにされており、続編の構想としてコリン・トレボロウ監督は「島の外界を舞台に、恐竜復元技術がオープンソース化されたら?」というアイデアに関心を寄せているようだ。クリス・プラットの続投も決定している。旧二作目『ロスト・ワールド』は『キングコング』を意識しすぎて失速した感が否めないが、新三部作では軍隊要素や恐竜の兵器活用といった部分が掘り下げられるらしい。軍隊と怪物といえば『エイリアン2』のような傑作も期待できるのでは?
 続編は2018年夏の公開が予定されている。
 アパトサウルスのように首を長くして待とう!

(鑑賞メーターより転載)