冒頭、ラテン楽器が奏でるリズム。
名前はわからないけど聞いたことのあるあの楽器が「アヘッアヘッ」とまるで下品な喘ぎ声のように聴こえてくる。
この時点でただものじゃない映画だって思ってしまいました笑
女嫌いで有名な田舎の大名がじいやに性の喜びを教えられるのと、徳川家の姫が「セックスは機能的なものであって快楽なんてなくてよい!」と教えられる対比が、見事なユーモアで可笑しくてしょうがない。
特に太鼓を鳴らしたら…の件はくだらなすぎて爆笑した。
その後の忠輝が性の喜びに目覚める瞬間のベッドシーンの妙な輝きと美しさや、可笑しなシーンの連続で途中まで「切実と滑稽」を描いたセックスコメディものと思って楽しく見ていた。
が、しかし、文字通りセックス禁止令が発動するあたりから、忠輝の欲望の醜さがでてきて様子はどんどんおかしくなっていく。
上下関係を利用した支配につながった欲は愚かしく汚い。
性の喜びに目覚める程度の堕落はまだ可愛げがあって見てられるけど、支配につながるとこうも見てられないほどきしょくなるものかと思いました。
そして、明確に後半ドライブするポイントであるあの切腹シーン。
生々しく痛々しくも、なぜか美しいんですこれが。
ここで改めて「ただものじゃないなこの映画」と思いました。
しかも、そこからはキリスト教的テーマをうまーくおり混ぜ、とんでもないところまで向かうのだけれど、それをさも仰々しく演出していないところが上品で素晴らしい。
「殿!条例175条は生きておりまするぞ!!」
あのシーンの「ああ、俺やっちまってたんだ」感。素晴らしかった。
(モノマネしたいんだけど日常においてできる瞬間がない)
そして、終盤の忠輝とサンドラの問答でなぜあんなにあの切腹シーンが美しかったのかわかる。
愛である。
こんなシンプルな答えがこんなに響くのはこの映画としての素晴らしさに他ならないと思います。
この映画の愛はやはりひとりよがりで自分勝手なものだけど、まごころが本質なのだと説いているのが綺麗事じゃなくてほんとに素晴らしい。
「俺はいま、俺のためにサンドラを抱いたぞ!」というあのセリフが妙にグッとくるんだよな。
そしてキレッキレのラストのメッセージ。ああ、そういうことが描きたかったんだな!と納得する。
これはどう薦めればいいのか難しいけど、文句なしの大傑作!!