SUKERUMAN

太秦ライムライトのSUKERUMANのネタバレレビュー・内容・結末

太秦ライムライト(2013年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

「誰かが見てくれている」
「太秦上のお姫様になりはるんやろ」
「怖気付いたんでっか?」

素晴らしかった
殺陣の斬られ役に焦点を当てた当作。
目の付け所はもちろん、脇役からの目線で描かれた世界は本当にリアル。
時代の流れに翻弄され、自分たちの本当のあり方、やりたかった事を見失っていく様がまじまじと、等身大で描かれていた。

まずはオープニング。
殺陣のシーンから始まるのだが、背景がCGで構成されており、刀に合わせてキャスト名などが現れる。
今風のお洒落な演出だ。
しかし僕には昔ながらの時代劇らしからぬ演出に皮肉さを感じた。それは全てを見終わった後に感じた感覚だった。
時代は変わって行くのだよ。と

劇中の中の演出も所々に細かな工夫が見れて心奪われる瞬間が多々あった。

初めの殺陣シーン。
屏風を破ったらカメラが見える。カメラではなく、演者側からの目線、むしろその更に奥、脇役からの目線のように感じた。

演技が出来なくなったさつきにカミヤマが話しかけるシーン。
刃を向け、放った一言でギアが切り替わる瞬間はおおっとなった。

ショーは行わないよ、とプロディーサーが言葉を発した後のシーン。
その直後に明かりが消え、真っ暗、シルエットのみに。
完全に切られ役のライムライト(スポットライト)が消えた瞬間を感じる演出。

さつきがカミヤマに会いに行って稽古をつけてもらうシーン。
夕日をバックに2人の刀が交わるシルエットが映る。
若い世代が新たなライムライトを作る。まだ光は消えちゃいない。
そんなイメージを感じる画だった。

仲間が引退して行くときの「お疲れ様でした」
声が震えて、泣きそうになる。
劇中唯一、カミヤマが弱さを画の中に見せるシーン。

そして最後のシーン。
カミヤマ引退、最後の殺陣。
刀が持てなくなる流れをつくるあたりがにくい。
やっぱりダメなのかと思わせてどうするんや??となった瞬間にプロディーサーが私が責任を取る。のひとこと。
やはりまだ光は消えていなかった!
からの弟子さつきと師匠カミヤマの殺陣。
豪快に弟子に斬られ、得意の海老反りを見せ倒れ込むカミヤマ。
それを俯瞰で撮り、桜がこれでもかというくらいに舞い、カミヤマを覆っていく。
一番最後のこのカット、これも監督の皮肉を少し感じた。
もう終わりだよ。と
まるで死人に花を添え、葬るかのように。。

そして一番好きなのはさつきがカンザシでカミヤマの髪を直してあげるシーン。
過去の思い出をそのまま再現されたこのシーン。
そんなあほな。とベタなこの演出だが、今思うと、もしかしたらこれはカミヤマのイメージでの出来事で実際は髪をとかすようなことはなかったのかもしれない。
真相は分からないが、髪を溶かした瞬間、私は泣きました。

以上、
書きすぎました。
ほんとに素晴らしい作品だった。

PS
主演の福本清三さん、21年1月にお亡くなりになったとのこと、ご冥福をお祈りします。
お疲れ様でした。
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